男女の着こなしには違いがある! イラストに活かせる着物の基礎知識

男女の着こなしには違いがある! イラストに活かせる着物の基礎知識

今まで世界の民族衣装を紹介してきたいちあっぷ講座ですが、日本の民族衣装といえば、そう着物です。

 

漫画やイラストで和風のモチーフは人気の題材のひとつですよね。着物キャラを描く機会も多いと思います。ですが、実際に着物を着る機会自体は減っており、「七五三や成人式くらいしか着たことがない」という方が大半ではないでしょうか。男性は女性に比べてもっと少ないかもしれないですね。

 

着物は洋服と作りが違うので、そのため着付け方も独特です。その分、着付けの手順やポイントを理解すると、イラストで色々なアングルに描き起こすためのヒントになります。

 

そこで今回は、性別による着物の描き分け方をご紹介します。

普段何気なく見る着物ですが、男女によって着方が異なりますので覚えておきましょう。

 

 

男女の着物で大きく違いが出るところ

衣紋の抜き方

衣紋とは、和服の衿にあたります。

男女の違いとして、女性は衣紋を抜き(首の後ろに衿を密着させない)、男性は抜きません。

衣紋の抜き方

女性は衣紋が抜けていると色気がUPしますが、抜きすぎると印象が変わってしまうので通常の着付けではやり過ぎないようにします。(例外:花魁などの色気を前面に出したい場合は大胆に抜いてもOK)

 

前の襟の合わせは左右の鎖骨の中心点(くぼみのあるあたり)くらいを目安にするとバランスがいいです。(男性は気持ち深めでもいいかと思います。)

 

衣紋についてはこちらの記事で詳しく扱っているので、ご覧ください。

帯の位置

女性の場合は帯の位置が高く、男性は低くなります。

和服の帯の位置

女性は帯幅があるので胸下からちょうど骨盤の上くらいが帯のくる位置になります。対して、男性は帯が細く、女性よりもかなり下の位置、骨盤のあたりで締めるイメージです。

 

洋服で考えると、けっこうローライズな位置となります。

着付けの際、男女共に胴がくびれの少ない「寸胴」なシルエットになるように、肌着の段階でタオルを巻くなどして補正をしています。

着物の帯の位置

女性は帯のラインがほぼ水平ですが、男性はやや後ろ上がりになります。

また、男性は帯上の腹のラインが少し出ているような「ハリがある」シルエットになると、かっこいい印象です。

おはしょりの有無

「おはしょり」とは、帯の下の長着がはみだしている部分のことです。

 
おはしょり

おはしょりは女性にはありますが、男性にはありません。これは男女の着物の仕立ての違いで、男性の着物は女性のものよりも短いからです。厳密には、仕立ての段階で「内揚げ」という方法で着物の内側に余りの布を縫いこんで処理をし、着たときにほぼピッタリの丈になるように仕立てます。

 

その為、着付けのときに裾を合わせても、おはしょりが出来ません。女性の着物は長く仕立てられているので、「裾を合わせて固定したときに腰回りに余った布=おはしょり」になります。

身八つ口、振り・人形

こちらも着物自体の仕立ての違いになります。

身八つ口、振り・人形

「身八つ口」とは、女性の着物の脇部分に開いている切れ目のことです。袖の内側の切れ目のことを「振り(振り八つ口)」といいます。男性は切れ目なく縫われており、女性の着物の「振り」に当たる部分のことを「人形」と言います。

男女共通で着物を描く際に気を付けたいこと 

着物_左前はNG

「衿の合わせ」には気をつけましょう!!着物は「右前」ということは知っている方も多い知識かと思います。「左前」は「死人合わせ」といい亡くなった方の装束での着方になり、縁起が悪いため一般的な着付けではNGです。

 

イラストなどの表現では様々なキャラクターのイメージやバックボーンが存在するため、左前での着物表現が「有り」な場合があるかもしれません。……が、その想定をしていないのに左前になってしまう、右前で描いているつもりが、バランスチェックなどで左右反転をしながら描いて最終的に左前になっていた……ということがないよう気をつけましょう!

 

※ちなみに右前・左前というのは物理的な前後ではなく時間の前後のことで、右の衿を先に合わせるので「右前」となります。

まとめ

「覚えておきたい男女の着物の知識」いかがでしたか?

触れる機会が少ないと案外知らないものですが、日本人だからこそ正しく着物を描きたいものです。長い歴史があるものなので、「正しい着こなし」が一番ステキに見えることも間違い無しです!是非参考にしてみてくださいね。

著・画 まつゆき杏

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ゲーム会社にてグラフィッカーとして勤務した後、現在はフリーランスでイラストレーターとして活動中。ソーシャルゲームや書籍用イラストなどを手掛ける。

 

 

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