MUGENUPのいまとこれから(3)クリエイティブ×テクノロジーの未来へ - MUGENUP10周年企画インタビュー -

MUGENUPのいまとこれから(3)クリエイティブ×テクノロジーの未来へ - MUGENUP10周年企画インタビュー -

本メディア「いちあっぷ」を運営する株式会社MUGENUPは、2021年6月14日に創業10周年を迎えました。

 

MUGENUPを率いるトップメンバー3人に10年間を振り返ってインタビューをしてきた記念企画ですが、第三回となる今回はいよいよ最終回。これからのMUGENUPが目指す方向性についてお伺いします。

 

▽前回の記事はこちら

 

――創業10周年を迎えた現在のMUGENUPは、人員的にどれくらいの規模になるのでしょうか。

 

伊藤:

社員全体では220人くらいになります。

 

2Dのイラスト制作に関わる事業部が最も大きく、アートディレクターを中心に、イラストレーターや進行管理、営業といったメンバーで構成されています。

 

プロジェクト管理ツール「Save Point」の事業部には、開発エンジニアや営業担当、カスタマーサポートといったメンバーがいますし、その他にも3DCGの制作チームや広告映像のチーム、出版事業、さらに最近進めている人材事業のチームなどがあります。

 

もちろん、組織を支えるバックオフィスを担当するチームもいます。

 

――創業時の4人からずいぶん大きくなりましたね。

 

伊藤:

そうですね。イラストだけではなく、3DCGやSave Point、出版など、総合的なクリエイティブ企業としてMUGENUPが成長してきたからこそ、ここまで大きくなれたんだと思います。

 

――2Dのイラスト制作事業の他に、3Dのチームもあるとの事ですが、具体的にはどのようなものを制作されているんですか?



芝川:

フィーチャーフォンからスマートフォンに移行していく中で、当然ゲームも3D化するだろうと考え、2014~15年頃には小さいながら3DCG制作のチームを立ち上げていました。

 

当初は2Dのイラスト制作で関わってきたクライアントを中心に案件を請けていたんですが、最近はコンシューマー向けタイトルの引き合いや、ゲーム以外の他業界からのご相談が増えています。

 

規模が大きい骨太の案件だったり、2Dのイラスト制作チームと共同でVTuberのモデルを作成したり、Live2Dでイラストを動かすような案件が増えていますね。

 

――コンシューマーに限らず、スマートフォンにおけるゲーム開発も3Dが主流になる中で、3DCG制作事業の案件の規模感も変わってきているのでしょうか。

 

芝川:

去年から、制作体制について色々と検証してきました。

 

例えば受託制作だけではなく、自社のアートディレクターが先方に出向し、デベロッパーと話し合いながら開発するなどといった取り組みです。

 

今まさにその芽が出始めているところで、数年がかりで開発するような大型プロジェクトが動き始めていたりします。

 

――3DCG制作のチームも2Dのイラスト制作事業と同じように外部のクリエイターとの協業になるんですか?

 

芝川:

3DCGはイラストと違って個人クリエイターの総数が少ないので、MUGENUPが開発の上流工程に入り、外部の制作会社を束ねるような形が多いです。

 

外部パートナーと組んでディレクションや進行管理を行ってきたMUGENUPのノウハウについては、ありがたいことにクライアントから信頼を頂いています。

 

その信頼を足掛かりに大きなプロジェクトを進めることで、会社としても事業の規模がひとつ成長できるのではないかと考えています。

 

――前回はクリエイティブ事業に加えてSave Pointについてもお伺いしましたが、会社としてはクリエイティブ事業とシステム開発事業を両輪に成長していこうという感じですね。

 

伊藤:

はい。これからの成長ために、MUGENUPとして強く推していきたいのがシステム開発なんです。

 

我々が開発したSave Pointによって効率的な制作環境が構築されれば、クリエイターにとっても仕事をしやすくなりますし、MUGENUPにとっても様々なビジネスのきっかけにつながります。

 

アニメ業界などゲーム以外の業界でもSave Pointを使っていただけており、システム開発を通じてシナジーを創り出して、MUGENUPが担うクリエイティブの範囲をどんどん広げていきたいですね。

 

――システムを開発できる技術力を基盤にクリエイティブ事業を拡大していく形なんですね。その上で現在、会社として課題に感じていることなどはあるのでしょうか。

 

芝川:

これからはシステムとクリエイティブの両輪を目指していますが、会社としてはここまでクリエイティブ分野で成長してきたので、どうしても外からはクリエイターの会社だと思われがちです。

 

「テック×クリエイティブ」を謳っていますが現状はエンジニアの採用力でまだまだ劣っているので、ブランディングとしてもっとテックの部分を押し出していきたいと思っています。

 

代表の伊藤はエンジニアとして創業から関わっており、代表に就任するまではCTOとしてクリエイターのためのシステムを開発してきました。

 

しかし伊藤のように統括も開発もできる人材というのはかなり貴重で数が少なく、今でも何かあれば伊藤自身が現場をまとめる状況が続いています。ここは解決しなければいけない課題ですね。

 

――200人規模の会社の経営と開発の実務を同時にやるのは、かなり大変そうですね。

 

伊藤:

そうですね(笑)。システム面で活躍してくれるエンジニアの方に、ぜひ加わっていただきたいと期待してます。

 

――社内で必要なエンジニアの育成を行う仕組みはあるんですか?

 

伊藤:

もちろん育成にも取り組みたいのですが、まだそこまでの余裕がない感じですね。MUGENUPはクリエイティブの制作を間近に見ることができる環境ですし、開発したプロダクトもゲーム業界やアニメ業界の現場で実際に使っていただいています。

 

クリエイターの生の声を聞くチャンスも多いので、クリエイティブに興味があるエンジニアにとって魅力的な会社なのではと思います。

 

特にアニメ業界へのシステム導入はまさにこれからなので、自分の技術力を活かしてアニメ業界に貢献していきたいと思うエンジニアの方がいらっしゃいましたら、ぜひ力を貸して欲しいですね。

 

――クリエイティブ方面での課題はありますか?

 

丹治:

クリエイターが自ら創作したコンテンツで生活していけるような新しい環境づくりは、これからも課題にしていきたいですね。

 

例えばイラスト制作に参加させていただいた絵本『えんとつ町のプペル』ですが、作者の西野亮廣さんのようなクリエイターが自分の生み出したIPで生きていける、そんな文脈や環境の一部をMUGENUPがサポートしていきたいと思っています。

 

――話題になった絵本以外にも、最近ではBL小説・コミック投稿サイトの運営や独自レーベルの展開など出版事業に力を入れていますね。

 

丹治:

はい。出版チームには、編集者や出版社の営業、電子書籍の卸で新規事業開発をしていた経験者など、出版に関わるバックグラウンドをもったスタッフが集まっています。

 

投稿サイトを運営しながら光る作品や作者をピックアップして電子や紙での出版につなげることをやっていますし、オリジナル作品の出版も手掛けています。

 

それに、昔と違って出版社の新人賞などに限らずとも、SNS等を使って自分の作品を発表することができる時代になってきています。MUGENUPもぜひ次の時代のトップクリエイターを産み出せるようになりたいですね。

 

――デジタルで絵を扱う業界では昨今、NFT(※)のような新しい技術も注目されていますが「テック×クリエイティブ」の会社としてはそういった方面にも取り組んでいかれるのでしょうか?

 

芝川:

NFTの動向には注目しています。例えばMUGENUPにはSave Pointというツールがあり、制作環境と結びつけて制作物の出所を明確に裏付けることができます。

 

これまではヒット作が産まれた時に、アナログ原画には価値があっても、デジタル制作データに付加価値はありませんでした。

 

しかしSave Pointによっていつどこで誰が作ったかを証明し、デジタル原画を出品できるオークションハウスやプラットフォームみたいなものを運営できたら面白いかもしれませんね。

 

※NFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)とは、ブロックチェーンを活用し、イラストやコンテンツなど様々なデジタルデータに識別情報を加え、コピーや偽造ができない唯一無二の存在とする技術。

 

――現在のコロナ禍でリモートワークが推進されていますが、元々テレワークを活用してきたMUGENUPのオフィス運用に変化はありましたか?

 

伊藤:

現状では、基本的に全社員が在宅勤務を行っています。2か所あったオフィスの片方は昨年春に解約し、今は残った1か所をさらに小規模なオフィスに移転しようか議論しているところです。

 

芝川:

この1年間、在宅勤務でも問題なく業務を行えていますので、これからのオフィスをどうするかはやっぱり考えていかなければなりません。
――コロナ禍が納まって状況が改善した先に、この業界の働き方がどうなるのか、MUGENUPとしてのビジョンはありますか?

 

伊藤:

物理的に顔を合わせることで生まれるコミュニケーションやアイデアも大事だと思います。個人的には出社できる環境があれば出社する方がいいと思っており、全てがリモート前提になるまでには、もう少し時間がかかるのではないでしょうか。

 

リモートでも十分なビジネス環境を作る方法はあるかもしれませんが、それがうまく運用できるのはある程度小さいチームからだと思います。

 

まずそこで文化が育って、それが会社として成長できればリモートでもいいのですが、元々、出社して働く文化があるチームや会社が、全てをリモートに移行するのはやはり簡単ではないとも感じています。

 

丹治:

オンラインだけで仕事をするというのは、実はかなり難易度が高いことなんですよね。MUGENUPは、リモートで仕事をする仕組み作りや、それを管理できる人材の育成に挑戦してきていたこともあり、すんなりとリモートワークに移行することができました。

 

――実際、いろいろな企業でリモートを導入してみて初めて問題点に気づいたことも少なくないと思います。

 

丹治:

将来的には、出社する必要がある社員というのはごく少数になると考えています。不定形な業務に取り組むコアメンバーや業務を定型に落とす役割の人がオフィスに出社し、一方、定型化された業務を行う人は場所にとらわれず仕事ができるようになると思います。

 

10年、20年といったスパンでみるとそういう流れが実現するのではないでしょうか。

 

――最後に、創業10周年を迎えた現在の想いを伺わせてください。

 

丹治:

この10年間、あまりにもやることが多くて密度も濃かったので、もう100年くらい働いたような気がしています(笑)。クリエイティブの限られた1領域ではありますが、業界の真ん中で頑張ることができたのも一重に社員の皆さん、そのご家族のおかげだと思っています。

 

そしてクライアントとクリエイターの皆様が、MUGENUPに信頼を寄せて下さったのはとてもありがたいことだと思っています。

 

会社がまだ小さかった頃に出資して下さったVCの方々や、まだ将来が見えないタイミングで取引をはじめて下さった銀行などの金融機関の皆様にも感謝しています。その他にも、税理士、弁護士、社労士、司法書士というプロフェッショナルの方々が、それぞれ専門性をもって会社を支えて下さいました。

 

10周年を迎えて、MUGENUPは業界の中ではかなり大きい規模のチームになっていると思いますが、もう一度、気を引き締めなおして、ここから頑張っていきたいと思っているので、改めてよろしくお願いします。

 

芝川:

同じ時期に創業して消えていった会社もあれば、自分たちよりもずっと大きくなっている会社もあります。

 

ここまでの10年間、よく頑張ってきたなという思いが3割と、まだまだ足りないよねという気持ちが7割ぐらいです。

 

会社として今までやってきたことの延長線だけでは、ここからさらに成長できるとは思えません。10年という節目を機会に第2の創業と決意を新たにして、次の10年を振り返るときには、頑張ったなと思えるようになれたらいいなと感じています。

 

あとは、これまでのMUGENUPはステークホルダーの皆様に感謝することばかりでしたので、これからは皆様に恩返しをできるようになりたいですね。

 

伊藤:

MUGENUPが10年やってこられたのは、本当に社員の皆さんとお客様がいてくれたおかげです。モバイルゲームのイラスト制作からスタートして、クリエイティブ制作という事業で成長することができたのも、すごくありがたいと思っています。

 

次の10年は、クリエイティブとテクノロジーを掛け合わせて会社の強みとしていくことが目標です。そのためにテクノロジーの部分をより強化して、社内の体制も変化させていきたいと考えています。

 

新しい手段を取り入れながら企業として成長していく中で、クリエイティブ業界のために色々な問題の解決方法をを提示したり、関わるお客様の幅も広がっていくと思うので、皆さんと協力しながら業界を良くしていきたいですね。

 

個人的には、クリエイティブ業界で働きたいと思っている人がどんどん仕事をできるような環境や市場を創ることができれば、クリエイティブ全体のマーケットも大きくなっていくと思うので、その切っ掛けをMUGENUPが作りたいと願っています。

 

取材・構成:平岩真輔(Digitalpaint.jp)