マンガ!コマ割り入門① ~コマ割りの約束と基本形~
2019.04.02
昭和40~50年代のマンガを読むと、今ほどコマ割りに変化がない事が分かります。作品によってはテンポが遅く、映像的演出が物足りなく感じるのではないでしょうか。
<ストーリーの作り方>や<キャラクターの作り方>には不変なものがたくさんありますが、<コマ割り>は時代によって大きく変化・成長し、現代のマンガはコマの配分や映像演出がとても巧みになっています。
コマ割りのポイントは一番大切な大きなコマを押さえ、その他のコマを分配してゆく事!
今回は後編として「コマの大小の付け方の法則」として『大切なコマ』と『コマ割りの静と動』をわかりやすく紹介します。前回の「コマ割り入門① ~コマ割りの約束と基本形~」もぜひ併せてお読み下さい。
▼目次
大切なコマは?
③ 「引きゴマ」
重ねゴマや変形ゴマの多用には注意を!
コマ割りの静と動
では、まず上の図を見てみましょう。原稿用紙に左右ページを意識してコマを割ったものですが、どのコマが一番大切だと思いますか?
まず、もっとも大きなコマを取れるように考えたいのが黄色く塗ってあるこのコマです。前ページからの流れで、読者にページをめくった瞬間にインパクトを与えたい!という時に演出します。
メインキャラの登場シーンや物語が盛り上がっている見せ場では必ず大きく取る様、工夫しましょう!
このコマは"アイキャッチャー効果″を考えて大きく取りたいスペースです。"アイキャッチャー効果″(視覚的効果)とは「人間の目線はまず左上から見る」と言われる習性を利用したテクニックです。
ページをめくってのインパクトを考えない場合は、左ページの左上のコマを大きく取る様、工夫しましょう!
このコマは「引きゴマ」と呼ばれ、読者にこの後の展開がどうなってゆくのか?ページをめくるワクワク感を煽るコマになります。
演出方法として次ページの1コマ目を大きく描く場合、このコマをわざと小さくします。めくった時の大画面のインパクトに前ページの小さいコマの圧迫感から開放感が生まれ、プロの漫画家のような演出となるはずです。
「ページをめくってインパクトを与えるコマ」をより印象付ける為に前ページの「引きゴマ」は出来るだけ小さく取りましょう!
上の図は左下のコマを見せゴマとして大きく取ったつもりなのに、重ねゴマや変形ゴマを多用した悪い例です。
有効的な場合もありますが、多用してしまうとどのコマから読んでいいのか分からなくなり見せゴマもボケてしまいます。
修整してみました。重ねゴマや変形ゴマは工夫したつもりでも却って見づらくなるので要注意です!多用し過ぎない様に気を付けたいものです。
上の2つの図は同じように左ページを3段・5コマで割った例ですが、少しニュアンスが違います。
こちらの図はコマを枠線の横ラインを0度、縦ラインを90度にしているのが特徴で映像演出として『静』を現しています。日常的なシーンや説明的、平凡な時の流れを演出します。
それに対してこちらの図はコマを枠線の横ライン、縦ライン共に斜めにしているのが特徴で映像演出として『動』を現しています。非日常的なシーンやアクションシーン、キャラの登場シーンやクライマックスの見せ場などを演出します。
上記2パターンをミックスした枠線の横ライン0度、縦ラインを斜めにするのは『静』を現します。
現代マンガでは【横0度、縦斜めの『静』】+【横、縦共に斜めの『動』】の組み合わせでコマ演出するのが主流です。もちろん、青年マンガ誌等で『静』『動』の演出に関わらず【横0度、縦90度】でしかコマを割らない作家さんも多数見受けられます。
これらは読者対象が少年・少女誌に比べ年齢層が高い事が要因で「安定したフレームの方が安心して読めるから…」と言えるでしょう。
みなさんも読んで欲しい方を想定したり、好きな作家さんのコマ割りの癖を検証してコマ割りのメリハリを作ってゆきましょう!
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複数の専門学校にてマンガ・イラスト学科をプロデュース。多くのマンガ家・イラストレーターを業界に輩出している。BS11で放映された『ゼロから始めるマンガ上達塾』ではKAN塾長として出演。 著書に「マンガベーシックテクニック」「なぞって上達 マンガ 手と足の描き方」がある。