イラストにおける背景の存在は非常に重要で、状況の説明や世界観を表現したり、キャラクターの魅力をより引き出すために描かれたりと、幅広く活用されます。
ただ、膨大な描き込みや、リアリティを出すためのテクニック「パース」を習得したりなど、完成までにかなり根気が必要で、単純に描きたくないと思っている人も多いと思います。
今回はそんな背景を気楽に描く裏技を紹介していきます。
▼目次
背景から雰囲気を想像させる
背景と言えば、建物や家具、木や山などをパースに沿って破綻なくしっかり描き込まなければいけないイメージを持っていると思います。しかし、そこまで描き込まなくても背景は描けます。
そもそも背景の役割とは、ここがどこだか分かるような情報を、イラストを見ている側に説明することです。説明ができていれば情報は必要最低限でも役割は果たせていることになります。
例えば上のように自転車と鉢植えがあるだけのイラストでも、これが「外」であることが分かると思います。想像の仕方によってはどこかの路地か、民家の庭先かなと思考の幅を広げられるかもしれません。
このように物を何個か置いただけでもイラストを見ている側の想像力を利用してイラストを成立させられます。
服装や色の使い方で雰囲気を演出する
さらにキャラクターの服装や、色の使い方で、イラストをより豊かにすることもできます。
キャラクターに制服を着せて、空を塗れば朝の登校中の雰囲気が増しますし、鉢植えの花によっては季節が夏であることを見ている側に想像させることも可能です。
もちろん物が多いほど背景としての情報量と説得力は増していきますが、必ずしも描き込み量がイラストの質を左右するわけではないのです。
パースの基礎の知識
ただ、物を何個か置くだけで背景は成立すると言っても、しっかりと地面に置いてあるように描かなければ全体に違和感が残ってしまいます。
キャラクターと物を同じ空間に置き、馴染ませたり背景として成立させるためのテクニックであるパースをここでは解説します。
パースを描くにあたって重要になるのが水平線と消失点です。水平線より上が空になり、水平線より下が地面になります。消失点はすべてのものの奥行きが集まる場所です。
何か奥行きのある物を描くときは、消失点に向かって奥行きを伸ばせばパースに沿った物が描けます。
まず水平線になる線を引き、その上に消失点を描きます。水平線上であればどこに描いても問題はありません。
その後、物を設置したい場所に四角を描き、奥行きを消失点の方向に延ばせば完成です。この四角が何かを描く際のアタリになります。
キャラクターや椅子や机、建物もこれを参考に描くことで、物と物がバラバラにならず、ひとつの同じ空間にある様に描けます。
消失点を2つ使ったり、高さを表現するパースのテクニックもありますが、気楽に描くだけなら後回しでも全く問題ありません。まずは消失点を1つ使ったパースのテクニックを完璧にマスターしましょう。
まとめ
以上の点をまとめると、
- 描き込まなくても、背景を想像させることによって成立させることができる
- パースは奥行きの表現や複数のものを並べて描くときに重要なテクニック
のことに気をつけて描いてみてください。
なお、人物やキャラクターの描き方については私の著書『デジタルイラストの「身体」描き方事典身体パーツの一つひとつをきちんとデッサンするための秘訣39』の方を参考にしていただければと思います。
パースや背景だけでなく人物の描き方が知りたいと思った際にはぜひ手に取って読んでみてください!
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目下”SCPの人”と化しているフリーランスのイラストレーター。
様々な絵柄を駆使し、カードゲーム「マジンボーン・データカードダス」「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」のイラストや、4コマ漫画「BIOHAZARD THE TOON」の執筆、小説の挿絵などを手がける。また、絵の描き方本『デジタルイラストの「身体」描き方事典身体パーツの一つひとつをきちんとデッサンするための秘訣39』を執筆し、活動の幅を広げている。