コンセプトアートから紐解くメカ・金属の塗り方講座

コンセプトアートから紐解くメカ・金属の塗り方講座

前回のコンセプトアートメイキング講座では、メインモチーフの大まかな塗り分けから遠景の描き込みの方法についてご紹介しました。まだ読んでいない方は、ご覧ください。

 

コンセプトアート ラフ

 

コンセプトアート 完了

今回は、コンセプトアート講座で使用したモチーフをメインに、メカニックの表現力を高めるためのメカ・金属の質感表現をメイキング形式でご紹介します。厚塗りなので、アニメ塗りにおける金属塗りとは一味違った表現方法となります。厚塗りにチャレンジしてみたい方はご覧ください。

 

▼目次

メカ・金属の描き方

メカ・金属の質感を描くストローク

メカのクオリティを上げる質感表現の描き方

質感によって異なる反射の描き方

リフレクション

シャドー

シャドー+リフレクション

金属感を出す塗り方

イラストに迫力を出すテクニック、スケール感を描く方法

イラストを仕上げる便利機能、色調補正について

色調補正を使いこなして「昼夜逆転」させる方法

 

 

メカ・金属の描き方

メカ・金属の塗り方

メカや金属は一定方向に向けて、全体の線を整えながら塗るのがコツです。多角形選択ツールを利用すると、直線で構成された機械を仕上げやすいのでオススメです。ラフの状態から、仕上げまでの工程時間を短縮できます。

 

デッサンやパースを確認して整えつつ描き進めていき、オブジェクトの細かいディティールの調整も、この塗りの段階で行います。

メカ・金属の質感を描くストローク

筆のストロークは一定方向に

筆のストロークは、必ず面に沿って動かしましょう。明るいところと暗いところを考えながら塗りを進めます。面の角の部分にハイライトを加えると、金属のシャープなエッジを表現できます。ただし、この状態だとプレーンな印象です。

テクスチャを使って金属の質感を作る

そこで金属の質感を追加します。ここでは、傷のように乱雑な筆運びの塗りとテクスチャを用いて、金属特有の汚れた感じを表現しました。

メカのクオリティを上げる質感表現の描き方

プレーンに塗ってしまうとスケール感があまり感じられませんので、写真やテクスチャを用いて、塗りの密度を上げて立体感や素材感、大きさをより正確に表現します。大きな筆から徐々に小さな筆に替えて描くイメージです。

 

では、輸送機のボディの質感を表現していきます

メカの下塗り

メカをプレーンに塗ってしまうとスケール感が弱く、おもちゃっぽい印象になってしまうので、絵の密度を上げます。

ランダムな塗りムラを付ける

ある程度ランダムな塗りムラを付けてあげると、金属特有のスケール感が出てきます。

テクスチャを重ねて金属の素材感を出す

テクスチャを重ねるとさらに金属の汚れや継ぎ目などの素材感が向上します。下のフリー写真素材のようなモノを貼り付けました。どの写真素材がマッチするかは貼り付けてみないと分からないので、色々な写真を試してみることをオススメします。

フリー素材

質感によって異なる反射の描き方

ここからは発着場の反射表現について紹介します。

反射は質感によって表現方法が異なります。今回取り上げる反射の表現は以下の3つです。

  • リフレクション
  • シャドー
  • リフレクション+シャドー

リフレクション

リフレクション

リフレクションの場合、発着場がフラットな金属なので輸送機が反射で映り込みます。輸送機を上下ひっくり返し、透明度を上げて使用するとそれっぽく表現できます

シャドー

シャドー

シャドー(影)は文字通り発着場に落ちる影のことですので、光源を考えて影を入れてあげます。

シャドー+リフレクション

シャドー+リフレクション

シャドーとリフレクションが両方に入った状態です。発着場には輸送機のシャドーと共に輸送機のリフレクションを入れると接地感が出ます

金属感を出す塗り方

ここからは発着場の塗りのプロセスをご紹介します。手順は輸送機と同じで大きな筆を徐々に小さくしながら仕上げていくことです。

ディテールを決める

パースに沿って発着場のディティールを大まかに決めます。

パースラインに沿って塗る

筆の運びはパースラインに沿って描くと金属のパネル感がでるので押さえておきましょう。

パースラインにそって塗りを重ねる

塗りを重ねていきます。直線で塗ったり、時々トントンと筆をおくようなタッチをすることで筆跡が均一にならないようにしています。

塗りムラを生む

そうすると塗りムラが生まれ、質感表現につながっていきます。

角にハイライトを描く

発着場の角にハイライトを描きます。ハイライトは均一にすべての角に入れないようにしましょう。統一感をあえて作らずランダム性を出すことで、よりリアルな描写に近づけます。

ハイライトは、真っ白ではなくベース色を少し明るくしたぐらいの色が良いです。

テクスチャを使用して質感を出す

綺麗に描き過ぎてしまった場合や描き込みが物足りない場合は、茶系の色を選択し、ブラシで「汚れ」を描き追加します。追加したものはオーバーレイや、乗算の効果を使ってのせていくとよいでしょう。

全体を整えて完成です

これで発着場のベースは完成です。

イラストに迫力を出すテクニック、スケール感を描く方法

イラストに迫力を出すテクニック

単に大きなものを描いても、比較する対象がないとスケール感がイマイチ伝わりません。そこで人影や車といった身近な比較対象になるものを描くことで、輸送機のスケールが理解しやすくなります

イラストを仕上げる便利機能、色調補正について

色調補正を使うことで絵の雰囲気を変えることができます。微調整が伴う作業に便利な機能です。下の絵の雰囲気を少し変えてみます。

イラストを仕上げる便利機能

多くの機能があるので、私がよく使う機能のご紹介します。

まず、トーンカーブやコントラストは、絵の明るさのメリハリが足りないと感じたときに使ってみると良いです。カラーバランスや色相色彩は、色味を後から調整するときに多用します。下図のようにトーンカーブやカラーバランスを使用し、マスクと併用することで効果の影響範囲をコントロールできます。

色調補正を使いこなして「昼夜逆転」させる方法

例えば、これらの機能を使うと後から昼を夜に変えることも簡単にできるので試してみてください。

トーンカーブ

まず、トーンカーブで太陽光をくっきりとさせます。太陽光の部分をマスクで指定して、図のようにトーンカーブを調整します。

カラーバランス

そして、カラーバランスを利用して色合いを調整します。先ほどと同様にカラーバランスを変更したい範囲をマスクで指定し、図のように調整しました。

最後に

なれないうちは描く時間がとてもかかります。あせらず、ゆっくりとで、かまいませんので一枚一枚、丹念に枚数をかさねて描いていきましょう。自分にあった描く手法や補わなくてはいけないスキルなどをいろいろ発見できると思います。また人に見てもらい意見をもらうこともとても大切です。SNSのコンセプトアートコミュなどで、わからないことを丁寧に質問すれば、よいアドバイスが頂けるかもしれません。是非自分の描きたい世界を追求してみて下さい。

 

最後までお付き合い頂きありがとうございました。

著・画 千葉伸一

デザイナー、イラストレーター。

フリーランスで活動中です。

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