アドビ社が提供するデジタルスケッチ&ペイントアプリAdobe Fresco(以下Fresco)のリリース1周年を記念したオンラインイベント「イラストレーター灸場メロライブドローイングイベント」が開催されました。
イベントにはゲストとして人気イラストレーター灸場メロ(以下メロさん)とFrescoマーケティング担当の岩本崇さん(アドビ社、以下岩本さん)の2名が登壇しました。
△イベントにご登壇したイラストレーターの灸場メロさん
△アドビ社の岩本さん
イベントの冒頭、まずはアドビ社の岩本さんからFrescoの特徴について「アドビのクリエイティブツールとしては、Adobe IllustratorやAdobe Photoshop(以下、Photoshop)などがありますが、それらは本来別々の用途のために開発されてきたツールです。
このFrescoはアドビとして初めてイラストペインティングのために開発したツールになり、液晶タブレットとペン型デバイスによって、キャンバスに絵を描くような自然な感触を再現できるところがポイントです」とご紹介がありました。
以降、本イベントは色彩のセンスに定評のあるメロさんにFrescoを使って描きおろし線画への着彩を実演してもらいながら、司会者や参加者からのチャット上での質問に適宜回答するという形式で執り行われました。
実演パートに入るとメロさんはまずFrescoの水彩ブラシを試用。カンバス上に色を乗せると水に溶いた水彩絵の具が紙の上でにじむように着彩範囲が広がりました。
他の色を置く度に、リアルの水彩絵の具のように色同士が有機的に混ざりあっていく様が画面に映し出され、最終的にいちごを模したキャラクターの絵ができ上がりました。
△ メロさんがFrescoの水彩ブラシで試し描きしたイラスト。水彩ブラシの滲みがデジタル上で表現できる。
Frescoでは、無償版でも50種類以上のブラシがプリセットされているうえ、有償のプレミアム版となると、なんと1000種類以上のブラシが使えます。しかもPhotoshopで使い慣れたブラシをインポートすることができ、実際に今回のイベントにあたって、メロさんが普段実際に使っているブラシをインポートしたそうです。
また、アドビ社だからこその大きな特徴として他のアドビ社製ツールとの連携機能があります。オンラインのクラウドドキュメントを経由することで同じファイルを別のツールでも作業が可能。
つまり外出先ではFrescoを使ってタブレットでスケッチし、自宅にもどったらデスクトップPCのPhotoshopでしっかり描き込む……ということもできるわけです。
メロさんも「ベッドで寝転がってFrescoで絵を描き、それをまとめて仕事にしたいなと思ったらデスクに移動してPhotoshopで開いて続きを描く、といったことができます」「クラウドドキュメントを使ったデータ管理は非常に便利だと思います」とコメントがありました。
続くライブドローイングパートは、メロさんが線画への着彩を実演しつつ各種質問に答えるという趣向で進行されました。
△AdobeFrescoで描かれたメロさんのイラスト「花と青年」着彩途中の様子
「ブラシは作られる方が多いですか?」という参加者からの質問に、メロさんは「公開されているものやプリセットされているものを使っています。自分に合うブラシを探す時間も楽しかったりするので、ブラシ探しは頻繁にやっています」とのこと。
「着彩の際にレイヤーは分けない方ですか?」という問いには「自分は厚塗りでどんどん描き進めていくのでレイヤーはあまり分けていません。何度もレイヤー間を移動することなく、1つのレイヤー上で手早く仕上げることを重視しています」と回答しました。
さらにメロさんの人気のポイントである「ラフや構図のアイデアはいつ考えられているのですか?」という質問については「寝る前に想像して、夢の中で描いています」「夢で描いたものを起きてから机の上で再現しようとするんですが、それができなくて挫折したり……」と答えて視聴者を驚かせていました。
メロさんは右手に握ったペンを使いながら左手で画面を直接タッチすることでFrescoを操作するスタイルを採っているそうです。消しゴムツールや選択ツール、カラーホイールなどの主要なインターフェースが全て左側にあるため、キーボードショートカットがなくとも、左手を使うことで容易に操作ができるのだそうです。
△ペンと同時に左手でFrescoを操作しながら着彩していくメロさん
もちろんFrescoでは、左利き用にインターフェースの左右を入れ替えたり、タッチショートカット機能をカスタマイズしたりすることも可能となっています。各種機能は今後も随時ブラッシュアップされていく予定だそう。
岩本さんは「意外に思われるかもしれませんが、日本にはプロアマ問わず絵を描かれる方がとても多く、海外からは『世界で最もクリエイティビティが高いのは日本人だ』と思われています。そのため日本のユーザーの皆様の声は弊社本国でも注視しており意見が通りやすくなっていますので、ぜひ多くの方に使っていただき機能改善のご意見を上げていただけたら幸いです」と視聴者に呼びかけていました。
着彩パートの後は、線画から着彩完了までのタイムラプス動画が3分程度上映されました。制作にかけた時間はFresco上での作業が4時間程度、Photoshopでの加工で1時間程度、合計約5時間。
「Frescoでのドローイングが思った以上に手軽で描きやすく、時間短縮につながりました。自分でもびっくりした」そうです。
△灸場メロさんがFrescoで描いたイラスト「花と青年」
イベントの最後に、岩本さんからは「Frescoはようやく1周年とまだまだ若いですが、皆様の世界観を創るお手伝いができるツールになってきています。今回知っていただいた皆様には、これからはぜひ使う側として見ていただきたいと思っています」とコメントを寄せました。
メロさんは「Frescoに触れたことを通じて、新しいツールの使い方や時間短縮の方法を学ぶいい機会になりました。これからも自分で機材を導入して、ベッドの上などで描いていきたいと思います」とコメントし、イベントを締めくくりました。
ライブドローイングご視聴ありがとうございましたー! pic.twitter.com/Hc1HXXT6Gw
— 灸場メロ (@9baMelo) September 26, 2020
(文:いしじまえいわ)