自然物・屋外人工物の塗り方講座 これで「学校の校門前」の背景イラストが描ける! ~彩色編2~

自然物・屋外人工物の塗り方講座 これで「学校の校門前」の背景イラストが描ける! ~彩色編2~

 “ゲームでよく登場する背景”をモチーフに、制作手順や描き方のポイントをご紹介するシリーズ 「ノベルゲーム背景イラスト講座」

 

前回は各モチーフの塗り分けを行い、全体の色合いを決めるところまで完了しました。

第二回は主に校舎や窓といった屋外人工物にハイライト・陰影を付けて細かいディティールを描き込んでいきます。手前にあるものは明るく、奥にあるものは暗く塗ることを徹底して、立体感や距離感を演出しましょう。

 

▼目次
左奥校舎の描き込み
ネットフェンスの描き込み
左手前校舎の描き込み

 

 

左奥校舎の描き込み

まずは左奥の校舎から描き進めていきます。

こちらは前回の彩色編その1で、あらかじめ壁と窓で別のレイヤーに分けておきました。

窓のレイヤーにクリッピングマスクを作成したレイヤーを追加し、窓枠の影を乗算モードで描き足します。

壁のレイヤーの上にサッシを描いていきます。サッシは正面と側面でレイヤーを分けて、正面に金属的な光沢を加えます。

窓の内側と反射を描き込みます。それぞれにクリッピングマスクを作成したレイヤーを、先に描いておいた窓枠の影の下に配置します。

 

窓の内側はあまり細かく描き込む必要はありません。天井と壁にある掲示板(もしくは黒板)にパースを合わせてシルエットを描くと、奥行を表現することができます。

壁にディテールを追加します。外壁には汚れや経年による色ムラを加えます。汚れは雨水で上から下に流れるような跡がつきますので、縦の流れを意識して描き込むとよいでしょう。

屋上部分の柵は手前と奥とで明暗をつけて描き分けていきます。奥にあたる部分は少し暗くし、シルエットで表現します。

 

手前側は光が当たるので、白に近い明るい色にします。さらに陰影をつけることで立体感を演出します。

ネットフェンスの描き込み

校舎の奥にあるネットフェンスは、あまり細かく描き込む必要はありません。ネット部分にテクスチャを追加して描き込みすぎると、手前に見えてしまうことがあるからです。


ネット部分の色を決めて塗りつぶしたら、レイヤーの不透明度を50%程度に変更し、半透明にする位で十分です。のっぺりして見えるようであれば、上にレイヤーを追加し、薄くしわを描いておけばよいでしょう。

ネットフェンスは校舎後方に一つあるほか、画面の最奥にもう一つ配置されています。全く同じ色だと前後関係が分かりづらいので、わざと違う色に変更しておきましょう。

左手前校舎の描き込み

左手前側の校舎も、同じ要領で描き進めていきます。外壁には薄く縦方向の汚れを加え、窓には窓枠の影とガラスの質感を追加します。

窓は一段凹んだ位置に取り付けられているため、外壁の側面と下向きの面が見えています。ここは正面より暗い色にすることで立体感を表現できます。

 

この状態では下向きの面が一番光が当たらないので、一番暗くしておくとよいでしょう。

窓枠・サッシ部分を塗り分けます。ここもサッシ正面と側面でレイヤーを分けておくと、色のはみ出しを防げます。

 

手前側の校舎はこの段階ですべて描き込まず、まずは色を置いて形を見せるようにしていきます。細かい描き込みは全体を見つつ、後で加えていきます。

画面中央付近の校舎も描き進めていきます。2階窓の上にある屋根やデッキ部分は一段手前側にありますので、外壁よりも明るい色で塗りましょう。

デッキ部分に柵がありますが、ここはまだシルエットの状態で問題ありません。また、外壁に落ちる影もこの段階ではまだ描かないようにしています。

右側にあるモニュメント部分はまだベタ塗りの状態なので、立体感が全く出ていません。奥側の面を暗くして、前後関係を表現しましょう。

 

少し見える側面部分もより暗くすることで、線画がない状態でも角がわかります。

ここまでの状態

 

次回は樹木や植え込みなど、自然物の描き込みに入ります。お楽しみに!

 

これら背景イラストは自著である『背景CG上達講座』(翔泳社)に詳しい解説がありますので、よろしければそちらもご参考下さい。

 

▼『背景CG上達講座』
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798137568

 

著・画 bcd

pixiv:https://pixiv.me/bcd
twitter:https://twitter.com/poskara

 

フリーランスのイラストレーター。専門はゲーム・アニメの美術設定、背景イラスト制作を手掛けています。イラスト制作業務のかたわら、専門学校で背景イラスト・アートワークの講義を担当。

 

著書に「背景CG上達講座」(翔泳社)。講師としては、岩崎学園横浜デジタルアーツ専門学校非常勤講師、専門学校東京ネットウエイブ非常勤講師、バンタンゲームアカデミー講師を勤めています。