影色が分からない人必見!表現幅が広がる影色の選び方
2016.05.25
人やキャラクターの印象を大きく左右する要素、髪。
髪は顔の次に注目され、キャラクターの個性を光らせるパーツです。
髪型が人物の印象を作るように、髪の塗り一つでキャラクターの雰囲気は大きく変わってきます。アニメ塗り風の影の少ない塗りであれば艶やかに、厚塗り風のマットな質感の塗りであれば柔らかに、とキャラクターの個性や画風に合わせて塗り方もコントロールしたいできると良いですよね。
今回はブラシ塗りベースで髪を柔らかい印象に仕上げる塗りの一例をご紹介致します。
ファンタジー系イラストや萌えイラストを描きたい方にオススメです。
はじめに、柔らかい質感を表現するためにブラシ設定を変えてみましょう。
今回使用するブラシはSAIにデフォルトで入っている「筆」の設定を変えたものです。
・デフォルトの筆設定の「混色」「水分量」「色延び」を全て0にする
・詳細設定の中にある最大濃度筆圧を65%前後まで下げる
・筆圧を好みで140くらいまで上げる
・ブラシ濃度を60~90%くらいの間で色の塗りやすさなどを見ながら臨機応変に変更する
ここで重要なのは固定のペンではなく、髪や肌、布や金属装飾などの塗りたいパーツや色彩などに応じてその場毎に使い分けたり設定を変更したりすることです。
ペン設定は人によって手に馴染むものと馴染まないものが大きく分かれてしまうため、一概に正解と言える物はありません。
一度デフォルトの枠から外れて自分に合ったペン設定を模索するのも、自分の塗りを見つける第一歩と言えるのではないでしょうか。
それでは早速塗っていきましょう。
今回ご紹介する髪の塗りは
下から、
1.ベースカラー
2.1影(+グラデ)
3.2影
4.3影(色味)
5.ハイライト
6.肌透け
7.オーバーレイ(仕上げ)
のレイヤー構成を基本構成として塗っていきます。
仕上げ以外の塗りは基本的にレイヤー効果を使わず通常レイヤーで色を表現していきます。
レイヤー効果を多用しない最大の理由は、自分の出したい色を出すのが難しいからです。
また、乗算などのレイヤー同士を重ねたときに色のズレがムラのようになってしまったり、ソフトによっては互換性のないレイヤー効果などがあったりすることも理由のひとつです。
もちろん、場合によってはレイヤー効果に頼るべきこともあります。
「レイヤー効果を使ってはいけない!」ということは、決してありませんので適材適所で臨機応変に対応していきましょう。
1影は特に物体の立体を表現する重要なレイヤーです。
今回はメインの陰影を1影と2影の2枚で表現するので、1影は光源を意識して大きめに影を配置していきます。
キャラクターの顔は見栄えの関係で平面的に描くので、髪の塗りで豪華さを表現します。
そのためにも1影の段階では多少、影の量を盛って塗るくらいが丁度良いでしょう。
ただし大きく塗る分、1影の色の選択は慎重に行う必要があります。
1影はベースカラーの大部分をカバーしてしまう為、ここで色の選択を誤ると配色の印象そのものを変えてしまう事になりかねないのです。
1影の色を選択する際は彩度や明度に気を使いつつベースカラーの印象を変えてしまわないことを意識しましょう。
▽影色の選び方についてはこちら
さらに1影とベースカラーを馴染ませるため、エアブラシで色の境界を軽くぼかします。
このとき、色を置き過ぎてしまわないように、あらかじめ1影のレイヤーとエアブラシのレイヤーを分けておくと塗り範囲や不透明度などを調整しやすくなります。
1影で大まかな髪の質感を表現しましたが、このままではメリハリがありません。
そこで2影(1影よりさらに濃い影)を使い、陰影にメリハリと深みを増した表現していきましょう。
1影よりも濃い色でもう一段階、影を落としていきます。
同時に1影の輪郭に沿うように色を置いてあげると塗りが全体的にリッチに見え、近年流行りの可愛らしいテイストに仕上がります。
2影まで塗り終えた段階でも問題はありませんが、2影の中にほんの少し赤~紫がかった彩度の低い色を置くと、柔らかさや女の子らしさが追加できます。
これにより立体感や空気感を追加し、陰影の単調さを取り除いていきます。
色味を追加する際、注意する点は2影とあまり明度の差を作らないことです。
あくまで自然に2影に色を追加するものであり、3影そのものが主張し過ぎないように2影と同じ明度、またはそれよりもほんの少し明るいくらいの色を選ぶと良いでしょう。
ハイライトはベースカラーよりも明るく彩度の高い色を選択します。
また、光源の色やベースカラーとの兼ね合いを考え今回は黄色み掛かった色を置いていきます。
髪を一本一本描くような感覚で髪の流れを描きつつ、後で形を整えるので、はじめは縦の幅を広めにハイライトを塗っていきます。
好みによっては広めのハイライトのままでも悪くはありませんが、コントラストが高くなりすぎると光が目立ち過ぎて収拾がつかなくなってしまっています。
ブラシ濃度を下げた輪郭の柔らかい消しゴムブラシでハイライトの形を削り、整えていきます。
直接ハイライトをその形のまま描くよりも、一度描いてから柔らかい消しゴムで削るほうがハイライトのエッジが優しく柔らかな仕上がりになり馴染みます。
ここまでくればもうあと一息です。
前髪の毛先あたりにエアブラシを使って肌の色をスクリーンで薄く乗せてぼかし、肌の透け感を表現します。
このとき広範囲に塗り過ぎたり、色を濃くしっかり置き過ぎたりして陰影の輪郭を潰してしまわないように注意しましょう。
また、後ろ髪の毛先にも同様に明るい色をスクリーンで入れると髪全体に透明感が現れ、軽く柔らかな印象を持たせることができます。
最後にオーバーレイで薄く赤みがかった色を光の当たる箇所にエアブラシで軽く塗って髪の塗りは完成です。
いかがでしたか。
キャラクターの髪は質感によって、ストレートで艶やかな髪や、柔らかくボリューミーな髪など色々あると思います。
髪はキャラクターの命です。
テンプレート化された塗りだけではなく質感に合わせた臨機応変な塗りが出来るよう、髪をしっかりと立体として捉え厚みや凹凸などを意識してより魅力的なキャラクターを描けるよう心がけていきましょう!
[著・画:漆原六花(うるしばらりっか)]
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Twitter https://twitter.com/Ul_rica
2015年1月からフリーランスで活動を始めた駆け出しイラストレーター。
どこまで行ってもゴールなんて無いお絵描きというジャンルにやり甲斐を感じています。