大切なのは、「読み手の気持ち」。 感情が伝わりやすい漫画の構図構成法

大切なのは、「読み手の気持ち」。 感情が伝わりやすい漫画の構図構成法

普段イラストを描いていても、漫画は描き慣れていないとなかなか難しいものです。ドラマチックなシーンがいまいちドラマチックに感じられなかったり、キャラクター同士の距離感が伝わらなかったり……。思った以上にイラストとは異なる部分が多いので、始めは悩むことも多いのではないでしょうか。

 

今回は「読み手に伝わりやすい構図の考え方」をご紹介します。漫画に挑戦しようと思っている方、一度つまずいてしまった方、漫画制作ビギナーが知っておくべき構図のポイントをチェックしてみましょう。

 

ふたつの構図を見比べてみよう

読者が一瞬で理解できることを意識して構図を考えると、キャラクターの心情や背景が伝わりやすくなります。

 

実際に、2つのサンプルを比べてみましょう。

▲構図A

 

 

▲構図B

構図A(伝わりにくい構図)

 

ツインテールの女の子が大事な話をするシーンです。こちらの例ではあまり重要な場面には見えません。


■気になるポイント1

1コマ目に建物全体が入っていますが、何階での出来事なのかが伝わりません。

■気になるポイント2

2コマ目は監視カメラのようなアングルです。全体を俯瞰しているため客観的に見えます。このような構図は雑談や重要でないキャラ同士のシーンに向いています。

■気になるポイント3

3コマ目の横向きの大ゴマは、空間にスペースがある為、長めの「いい話」をさせたいときなどに向いています。また、前のコマとキャラクターの向きが異なると読者が混乱しやすくなるので気を付けましょう。

構図B(伝わりやすい構図)

 

同じシーンの構図を変えてみました。

■気になるポイント1の修正

1コマ目は二階に注目させたいので1階を塀で隠しました。

■気になるポイント2の修正

2コマ目はカメラアングルを下げることで少女に注目しやすくします。

■気になるポイント3の修正

3コマ目は正面からの構図にし、あえて背景を描き込まずキャラクターを目立たせます。

 

いかがでしょうか?登場人物の心情や現場の様子がよりわかりやすくなったと思いませんか?

カメラアングルから伝わる状況、感情

漫画では状況や感情を極端に表現した方が読者に伝わりやすいです。

構図とマッチしたシーンをリストアップしました。このポイントに当てはめていけば、構図で悩む心配が少なくなります。

 

■フカン(見下ろすカメラアングル)構図に向いているシーン

不安、恐怖、迷い、おののき、にらみ、弱者、リベンジ、挑戦、何かを目指す、1階、プール、グラウンド、地下に続く階段、など

■アオリ(見上げるカメラアングル)構図に向いているシーン

怒り、陶酔、狂気、強者、権力者、勝利、印象的な登場、極端に高い身長、城、高層ビル、など

■正面(平行カメラアングル)構図に向いているシーン

主人公、重要なシーン、目力、決意、注目させたい物や人物がいる場合、など

 

感情を極端に表現したいときは、あえて背景を描かないなどの緩急をつけましょう。

漫画を描いて、技術の幅を広げよう!

漫画もイラスト制作と同様に、読者が一目見て分かる構図を作ることが重要です。「漫画も描ける」スキルは絵描きとして強みのひとつになるので、これを機に技術の幅を広げてみるのはいかがでしょうか?

 

[著・画:天川詩月(あまかわしづき)]

pixiv http://pixiv.me/amakawa02

Twitter https://twitter.com/shizukiamakawa

2002年12月からフリーランスのCGイラストレーターとして活動。

過去にアナログで漫画を描いていた経験を活かし、2013年からCLIP STUDIO PAINT EXを使い始めました。