8インチ液タブ『raytrektab』はプロの現場でこう使える! 漫画家・ぢたま某先生インタビュー

8インチ液タブ『raytrektab』はプロの現場でこう使える! 漫画家・ぢたま某先生インタビュー

WindowsタブレットPCでありながら、「液タブ」としての機能にフィーチャーしたクリエイター向けマシン『raytrektab』。5万円の価格と8インチサイズは他の液晶タブレットと比べるとかなりコンパクト。果たして本当にちゃんと絵が描けるのか??

 

そんな率直なギモンに、これまでWeb漫画家・ライターのやしろあずきさんやアニメーターの松浦麻衣さんなど、プロクリエイターの方々に答えていただいてきました。

 

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今回は『kiss×sis』『小学生がママでもいいですか?』を連載中の人気漫画家・ぢたま某先生にraytrektabを使っていただき、漫画執筆工程の中での役割やiPad Proとの比較など、raytrektabの「クリエイター向けマシンとしての性能」について遠慮なくお話しいただきました!

 

▼目次

1.描き味は「期待以上」! 

2.ボタンなし!軽い!付属の専用ペンの魅力

3.手に乗せるだけでしっかりグリップ! 手が疲れない持ち方の裏ワザ 

4.CLIP STUDIO PAINT、ComicStudio使用時の注意点

5.プロの現場での活用術・ネームなら断然raytrektab!

6. raytrektabとiPad Proは似ているか?

7. ぢたま某先生からメッセージ「液タブはダメだ、という方にオススメ!」

 

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※本記事は株式会社サードウェーブのPRにてお送りいたします。

 

描き味は「期待以上」!

―― 先生はネットでraytrektabを知って導入を検討されたと聞きましたが、最初の印象はいかがでしたか?

筆圧感知が4096階調もある、まずここに惹かれました。私は元々板タブ派で、数年前に8インチの液晶タブレットが流行ったときに触ってみたのですが、その頃は全然惹かれなかったんですよ。

遅延があったり、ペン先と実際に描かれる線とでズレがあったりで、大ラフくらいは描けるけどそれ以上のことはできないな、という感じでした。

―― そのときのマシンの筆圧感知は1024階調くらいでしたか?

そうですね。raytrektabはその4倍です。今、仕事で使っている液タブは2048階調なので、商業誌のメイン制作環境よりもスペックが高いんです。

ちなみに、その倍の8192階調の液晶タブレットも買って使っています。確かに素晴らしい描画感ですが、「この描き味なら半分くらいでもよかったんじゃないの?」と思っていました。4096階調のraytrektabはちょうどそのポジションですね。

―― 実際に触っていただいた感覚としても、期待通りでしたか?

期待以上でした。以前の液タブとはまるで違ったんですよね。視差があまりないし、描き味は思った以上にいい、というのが正直な感想です。

「まあ、このくらいだろうな」という見込みと同じ程度だったら、本当に導入したくなるまでにはならなかったと思います(笑)。

―― それまでの環境、たとえば30万円の4K液タブと5万円のraytrektabとで、描く上での満足度はどう違いましたか?

もちろん並べて比較すれば違いが分かると思いますが、描き味という意味で8192階調と4096階調とで大きく変わることはないんじゃないでしょうか。

ボタンなし!軽い!付属の専用ペンの魅力

―― raytrektabには専用のペンが付属していますが、使用感はいかがでしたか?

持ちやすくてよかったですよ。私はペンのボタンを使わない派なので、ボタンが元々ないのが何よりもいいですね。

タブレット専用ペンには大抵ボタンがついていますが、設定で機能を無効にはできるんですけど、とにかくボタンが邪魔で握りにくくて……ということでタブレットを買ってきてまずやることは、ペンのボタンを剥がすってことだったりします。

――剥がす!? ペンのボタンって剥がれるんですか?

普通に剥がせますよ!メリッ、と。その後は元々ついていたグリップも外して、文房具屋で買ってきた自分に合ったグリップを装着して使っています。

普通のボタン付きのペンであればそんなことをするんですが、raytrektab付属のペンは持ちやすかったのでそういうことは一切しなかったです。

鉛筆と同じ六角形なのが持ちやすかったんだと思います。

raytrektabのペン

あと材質の問題もあります。たとえば Apple Pencilだと固すぎて、こう……なんだか金属棒を持っているような感じなんですよね。

だからグリップを付けるなどしてカスタマイズしているんですが、raytrektabのペンは軽いのでペンのお尻の重みに振られないんですよね。だからグリップなしでもいけたんだと思います。よくこんなに細く軽くできましたね。

――Apple Pencilだとバッテリーが入っている分重いので、グリップを付けてグッと力を入れて握ってるんですね。raytrektabの専用ペンにはバッテリーが入っていないので、5グラム程度と鉛筆とほぼ同じ軽さなんです。

ペン入れのようにしっかりした線を引くときは、グッと力を入れて握り込むので太いペンの方がいいんですが、サッと描く下絵などであれば鉛筆のように細く軽いペンの方が適しています。

つまり、手軽さが特徴であるraytrektabと、この細いペンはマッチしているんだと思います。だからペンに何かを付けたり、拡張する必要がないんです。

――カジュアルなお絵描きには、raytrektabはいろんな面でベストマッチしているんですね。

 

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手に乗せるだけでしっかりグリップ! 手が疲れない持ち方の裏ワザ

――ちなみに先生は縦持ち派ですか? 横持ち派ですか?

横持ちだとメニューバーに触ってしまうので、縦持ちのことが多かったです。そこでオススメなのが、100均で買った「滑り止めシート」。

車のダッシュボードに物を置くときに使うようなものなのですが、これを手とraytrektabとの間に挟むことで、ほぼ握らなくても軽い力で持てるようになります。

raytrektabの使い方

ぢたま先生の裏ワザ・滑り止めシート挟み!

 

――400gと元々かなり軽いボディですが、確かに意識して握っていると疲れてきますもんね。

これ1枚で天と地ほど感覚が違います。特に握力の弱い方や手が小さい方にオススメです!

CLIP STUDIO PAINT、ComicStudio使用時の注意点

――今回raytrektabを使われるにあたって、絵を描く際にアプリケーションはどんなものを使用されましたか?

今回はCLIP STUDIO PAINTとComicStudioを使用しました。

最初CLIP STUDIO PAINTの筆圧感知が効かなかったんですが、環境設定の「使用するタブレットサービス」をWintabからTabletPCに切り替えたところ、筆圧感知が正常に動作するようになりました。

そこにたどり着くまでに結構時間を要しました(笑)。raytrektabでCLIP STUDIO PAINTを使う場合はこの設定は最初にやるべきですね。
あと、ComicStudioは起動が非常に遅く、CLIP STUDIO PAINTの2、3倍くらい時間がかかります。

落ちたかと思うくらい全く反応しなくなるんですが、しばらくして起動したら問題なく使えるので、その点は注意した方がいいと思います。

1200dpiにしているせいかもしれませんが、ページ遷移のときに固まってしまいます。一度ページが切り替わってしまえば問題なく描画できるんですが……。600dpiくらいでもよかったかもしれません。

raytrektabで漫画ネーム制作

ネーム

ComicStudioでの『kiss×sis』ネーム作業


――反応速度が遅いことがあるというのは気になりますね。他にそういったシチュエーションはありましたか?

ペンの反応速度などはデスクトップ環境と比べても遜色ないと思います。

ただ、CLIP STUDIO PAINTもComicStudioも、レイヤーが増えたり、カケアミなどの装飾系のブラシを使ったりすると徐々に重くなるので、情報量の多いイラストや漫画の仕上げなどにはあまり向いていないですね。

逆に、ラフな線画ならOKですし、ペン入れも人によっては大丈夫だと思います。

プロの現場での活用術・ネームなら断然raytrektab!

――実際に漫画を描くにあたってraytrektabは役立ちましたか?

正直なところ、作業の全てをこれでやる、という使い方はしなかったです。

デスクでの作業では普段左手デバイスを使っているので、raytrektabはその代わりにはなりません。左手でデバイスを探しちゃう(笑)。

それに、画面が大きい方がはかどる作業というものはやっぱりあります。
raytrektabの強みは小さくてモバイルが可能なところです。

デスクに座った状態で使ったりもしましたが、寝る前にベッドの上でごろっとしているときなどにも使えました。

キャラクターデザインなどの設定作業やラフ画、コマ割など、ペン入れする前くらいまでの作業であれば、場所を問わずにできるのがいいですね。

raytrektab

『小学生がママでもいいですか?』(月刊少年シリウスで連載中)ヒロイン・木々那(ここな)の設定画

あと、ネタ出ししながら寝ることもあるので、ベッドサイドで手元にあると便利です。

アイデアをスマホにテキストで書き残したりもするのですが、頭の中に浮かんだイメージなんかは朝になったら忘れていたりするので(笑)。

そういった場所を問わない使い方はiPad Proでも試してみたんですが、やっぱり大きいので扱いが面倒くさくて、いつの間にか机の上に置きっぱなし……という感じになりました(笑)。

気軽に使うならこっち(raytrektab)ですね。

――特にこういったシーンで役立った、というのはありますか?

ネーム段階でとても役に立ちました。ネームは大きい画面で描くと、どこまでも拡大して細かく描けてしまいます。

すると、自分でも気付かないうちにコマを細かく割ってしまう傾向があることに気づきました。

それだと紙面にしたときに、細かすぎて見づらい漫画になってしまうんですね。

raytrektabだと画面が小さいので、この範囲でパッパとコマを割れば、紙面でちょうどいいバランスのコマ割りができます。

raytrektab

『小学生がママでもいいですか?』のネーム作業の一部はraytrektabで行われました。

 

――なるほど。実はアニメ監督のユーザーの方にインタビューしたときも「絵コンテは映像の構造を作るためのものなのであまり細かく描いても意味がないんだけど、大きい画面だとつい描き込みたくなってしまう。そこを割り切るためにraytrektabで絵コンテを切った方が、結果的に効率が良くなる」とおっしゃっていました。

 

漫画のネームでも全く同じだと思います。

ネームを描くときにはこの小さな画面の方がはかどるだろうな、というのは店頭で見たときから思っていましたが、正解でしたね。

―― それは感覚的な問題で、大きい画面で拡大せずに描けばいいのでは? とも思うのですが……

そう思われますよね(笑)。でもその感覚がとても重要なんです。

―― では、raytrektabはアイデア出しやネーム作業など、主にペン入れの前段階であれば、プロの漫画家の現場でも活躍できる、と考えていいでしょうか?

実際にraytrektabがあることで漫画に取り組める場所が広がったりするので、そのように考えていいと思いますよ!

 

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raytrektabとiPad Proは似ているか?

――これまで何度かiPad Proが話題に上がりましたが、同じタブレットPCということで似たハードではあると思います。その点はいかがお考えでしょうか?

12.9インチのiPad Proを使っていますが、8インチのraytrektabとは画面の大きさが全然違うので、自然と何に使うのか? どういったシーンで使うのか? も変わってきます。

また、先述の通りペンの重さや太さ、機能の違いから、どういった絵を描くのに向いているのかも違いますね。
2017年11月、iPadでもCLIP STUDIO PAINTが使えるようになって話題になりましたが、あちらの場合、申込みから6ヶ月無料で、それ以降は月額980円がかかるようになります。

一方、raytrektabにはCLIP STUDIO PAINT DEBUT がずっと使えるシリアルコードが最初から入っています。
また、Apple PencilはiPad本体と別売りなのに対し、raytrektabはペン同梱でもあるので、そういったコスト面でも比較は可能です。

もう一点、メイン制作環境とのデータの連携については、Dropboxなどのクラウドサービスをダイレクトに使えるraytrektabの方が現状制限が少なくスムーズに感じました。

――総じて、似ているけど実際には特性も用途もかぶらない、ということでしょうか。

そう思います。少なくとも自分の感覚としては違いましたね。

ぢたま先生からメッセージ「液タブはダメだ、という方にオススメ!」

―― それでは最後に、先生から「こんな人にはこんな使い方が向いているよ」というメッセージをお願いしたいと思います。まずは漫画を描かれている方にとって、raytrektabはどうオススメできるでしょう?

漫画を描くためのツールとして見た場合、raytrektabで完パケ原稿まで全部こなすというのは正直厳しいと思います。

一方、デザイン設定や下描きくらいまでであれば業務でも問題なくいけるので、絵を描くフィールドを広げたい、一つの場所にとどまらない……飽きっぽい人に特に向いていると思います(笑)。
あと、私もアイデア出しは散歩しながらとか喫茶店で、という場合が多いですが「ふと沸いてきたアイデアをささっと絵にして、後でデータ管理」という使い方にはすごく合っていると思います。

用途は限定的ですが合う人には合う1台、という感じですね。

――では、お絵描き初心者の方にとってはどうでしょう?

気軽に、気楽にお絵描きを楽しめるハードだと思います。

初めて絵を描くとき、いきなり大きな原稿やスケッチブックを目の前にして描けるかというと、なかなか描けないんですよね。

逆に教科書やメモ帳のはじっこなんかにチョロチョロっと描くもんじゃないですか。

そういう意味で「小さいことによる入りやすさ」「気負わなくて描ける」というメリットはあると思います。

私だって、仕事で大きな画面に真っ白の画面がバーンと出てくると、しんどくて溜息出ますもん(笑)。
CLIP STUDIO PAINT DEBUT のシリアルコードが特典されていることや、専用ペンが付属していて本体だけ買えば他にあれこれお金を払う必要がないのも、アマチュアや学生さんにとっては気軽に始められるポイントかもしれませんね。

あと、3、4年前に液タブにチャレンジして「これはダメだな」と思った人には特にオススメです! 昔と違って、かなり描き味が良くなりました。

「デジタルはダメだ」「一昔の液タブはダメだった」という方こそ、ぜひ店頭や同人誌即売会会場などでraytrektabを触ってみてほしいです。

きっと私と同じように、その描き味にビックリすると思います。

――ぢたま先生、ありがとうございました!

(著:いしじまえいわ)

 

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4096階調の精細な筆圧感知とレスポンスの良さは、まるで本物の紙に描いているようななめらかな描き心地を感じさせてくれます。

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