『探検ドリランド』13年を支えるイラスト制作術 ~MUGENUP創業10周年|グリー株式会社 『探検ドリランド』開発チーム様 インタビュー~
2021.10.06
株式会社MUGENUPは、2011年6月14日の創業から10周年を迎えました。
ここまで来ることができたのも、支えてくださった企業の皆様や、一緒にお仕事を重ねてきたクリエイターの皆様あってのことです。心より感謝申し上げます。
今回はグリー株式会社様のモバイルゲーム『探検ドリランド』開発チームの皆様へのインタビューの模様をお届けします。
2008年にサービスを開始し、本邦のモバイルゲームの中でも特に長い歴史を誇る『探検ドリランド』ですが、実はMUGENUPとして、8年以上にわたってイラスト制作を担当させていただいており、MUGENUPの歴史において、一二を争うほど長くご一緒しているタイトルの一つでもあります。
『探検ドリランド』の歴史や制作秘話はもちろん、MUGENUPがどのように作品のイラスト制作に貢献してきたのかについても、詳しく伺いました。
▼目次
インタビューを受けてくださった『探検ドリランド』開発チームの皆様
版権モノにも強い!?『探検ドリランド』チームから見たMUGENUPのクオリティ
インタビューを受けてくださった『探検ドリランド』開発チームの皆様
内山 雄佑 様
探検ドリランドグループ / プロデューサー (以下、内山様)
木下 康徳 様
探検ドリランドグループ / ARTチーム / マネージャー (以下、木下様)
森谷 美咲 様
探検ドリランドグループ / ARTチーム / アートディレクター (以下、森谷様)
日野 実喜 様
探検ドリランドグループ / ARTチーム / カードチーム リーダー (以下、日野様)
『探検ドリランド』とは? 13年の歴史とその魅力
――まずは『探検ドリランド』はどのようなゲームなのかについて教えてください。
内山様:
ハンターカードと呼ばれるキャラクターたちを集めてダンジョンを攻略するカードバトルRPGです。2008年のサービス開始当時はドリルで地下を掘り進むゲームだったのですが、2011年に大幅リニューアルを行い、現在の形になりました。
10年、もしくはそれ以上の長い間このプロダクトを愛してくださっているお客さま方がたくさんいらっしゃり、ファンのみなさまに支えられています。
△『探検ドリランド』
――長く続いている『探検ドリランド』らしさを、多くのお客さまが変わらず楽しんでくれているということですね。ということは、何か新しい施策やゲームの改善を行うにしても、『探検ドリランド』の良さをいかに守るかが重要になる気がします。
内山様:
まさしくその通りです。『探検ドリランド』らしさはかなり気を遣うところですね。
――そんな中で、最近好評を博している取り組みを教えてください。
内山様:
ゲーム内でスタートした「ゆるドリ!」という4コマ漫画コンテンツがご好評いただいています。
△「ゆるドリ!」TOP画像
△「ゆるドリ!」4コマ漫画の例
内山様:
『探検ドリランド』はカードバトルがゲームの中心なこともあって、これまでキャラクターの人格や設定を深掘りする機会があまりなかったんです。そこで「ゆるドリ!」では、これまで必殺技のフレーバーテキスト等で垣間見えていたキャラクターの個性を、漫画という形で深掘りし、お客さまにより愛着を持っていただけるようにしています。
――キャラクターたちの新たな側面が知れることは、ファンにとっては嬉しいですよね。
内山様:
はい。おかげさまでお客さま同士のコミュニティ内でも「この子、こういう子だったんだ!」「こういう面もあるんだ」などと話題に挙げていただけているようです。温かい反応も多くいただけて嬉しかったですね。
――長く遊んでいるプレイヤーにとっては普段目にしているキャラクターへの愛着もひとしおでしょうから、まさに『探検ドリランド』らしさを大事にしたコンテンツですね。ちなみに人気のキャラクターといえば誰ですか?
木下様:
ハルカはゲーム内でナビゲーションを務めているので、お客さまが必ず目にしている知名度の高いキャラクターですね。
△『探検ドリランド』でナビゲーションを務めるハルカ
森谷様:
『探検ドリランド』は2012年と2013年に2回TVアニメ化しているのですが、その時にプレイを始められた方も多くいらっしゃいます。そのため第1作で主人公を務めたミコトや第2作に登場したラインハルトも特に人気です。
△左が登場当時のミコト、右が現在のミコトの一番レアリティが高いカード
△左が登場当時のラインハルト、右が現在のラインハルトの一番レアリティが高いカード
森谷様:
その他ですと、メイチェリ、クララ、レパーノなどサービス初期から登場していて、お客さまにとって思い入れのあるキャラクターが喜ばれる傾向がありますね。
人気の既存キャラクターはレアリティ違いや衣装替えなどで再登場する機会もあるので、その際はきちんとそのキャラクターに見えるように従来のカードのお顔に似せて描いていただくようにしています。
△メイチェリ(左)、クララ(中)、レパーノ(右)
カードイラストの制作工程
――『探検ドリランド』の一番の見どころであるハンターカードのイラストについて、制作工程を教えてください。
日野様:
まず過去のカードデザインやその実績を元に検証を行い、新規イラストはどのようなものがいいかをおおまかに設計します。
また、過去カードや他作品に類似したキャラクターがいないかなどのチェックを行います。そうして設計したカードの要素を、プランナーと相談しつつ「モチーフ書」という資料に落とし込みます。
△モチーフ書と完成したカード
日野様:
モチーフ書ができたらそれをMUGENUPさまなどのアートハウスにお渡しし、イラスト制作を依頼します。
クリエイターさんとのやり取りでは、「大ラフ」と呼ばれる線画で大まかな専有面積やエフェクトのテイストなどのチェック、「詳細ラフ」と呼ばれるキャラクターの顔や色味などのチェックを経て、完成したイラストの線画と彩色稿を納品いただいています。
△大ラフ(左)、詳細ラフ(中)、完成イラスト(右)
――キャラクターデザインをする上で気を付けていることはありますか?
日野様:
『探検ドリランド』のお客さまは、プレイ歴が長い方が多く、比較的画面の小さなスマートフォンでプレイされている方も多くいらっしゃいます。そのため小さな画面と大きな画面、どちらで表示してもキャラクターの特徴がしっかり伝わるようにデザインしています。
――具体的にはどのような点に注意されているのでしょうか?
日野様:
頭身を低くして視認性を上げることや、線を太くはっきりさせること、色がつぶれてしまうことを避けるためなるべく同系統の色を固めないようにすること、などです。
こういったデフォルメイラストのノウハウは、約10年前のサービス開始当時のデバイスのスペックに対応したものだったんですね。
でもそういったキャラクターデザインこそが”ドリランドらしさ”でもありますので、当時のキャラクターデザインの印象をきちんと残しつつ、現在のスマートフォンの表示においても映えるようなデザインを心がけています。
――たしかに、表示環境がよくなったからといって無暗に情報量の多いイラストにしてしまっては”らしさ”が損なわれてしまいますね。
日野様:
そうですね。一方、最近はお客さまの環境もどんどんハイスペック化していますので、高レアリティのカードではグラデーション等を使ってより華やかにするなどの試みも行っています。
△デフォルメを意識したカードの例。マリベル(左)とクララ(右)
版権モノにも強い!?『探検ドリランド』チームから見たMUGENUPのクオリティ
――『探検ドリランド』の特徴の一つとして、頻繁に行われるコラボイベントがあります。こういったコラボ案件のイラストを制作する際はどのような点に気を付けているのでしょうか?
日野様:
コラボ案件では、版元様のキャラクターの特徴をおさえつつドリランド風の絵柄にデフォルメさせていただく必要があります。そのためには元キャラクターの特徴となっているのはどういった箇所なのかを検証して、その部分は強調しつつ、ちょうど良いデフォルメ具合を検討して制作しています。
コラボ案件のデザインは特に神経を使います。その中でも頭身が高くリアルなキャラクターは、強調すべき要素とデフォルメすべき要素のバランスが難しいです。
――MUGENUPのクリエイターのみなさんが関わったコラボ案件もありますか?
日野様:
本当にたくさん制作いただいています。MUGENUPのクリエイターの方に描いていただいたイラストはいつも丁寧でクオリティが高く、大変助かっています。版元さまから「原作再現度が高い!」とお褒めの言葉をいただくこともあるんですよ。
――MUGENUPのクリエイターに対してどのように感じられていますか? 改めて率直なご意見をください。
森谷様:
カード制作のスケジュール管理がしっかりされている印象です。遅延なく、安定したクオリティでご制作頂けているのは、MUGENUP様の管理が行き届いているおかげであると思います。
日野様:
カード作りに対して常に真摯に向き合われて、丁寧に制作していただいているという印象があります。疑問点などもこまめに確認してくださいますし、最初からレベルの高いイラストを出してくださるのでフィードバックの回数も少なくて済みます。
そうして出来上がったイラストのクオリティそのものも、いつも安定して高い印象です。
木下様:
『探検ドリランド』の特徴であるデフォルメされた絵は、単に絵が上手ければ描けるものではなく、独特の技術やセンスが求められます。
MUGENUPさんにはそういったイラストをお願いできるクリエイターさんが多くいらっしゃっていて、クオリティ面では本当に信頼させていただいています。特に難しい案件の際は「ここはMUGENUPさんだな」と頼らせていただいていますね。
――MUGENUPがお手伝いさせていただいている企業さまおよびタイトルとしては『探検ドリランド』は最も歴の長い案件の一つです。長くお付き合いいただけている理由についてどのようにお考えでしょうか?
木下様:
やはりクオリティ面での信頼が第一だと思います。
たとえば、コラボ案件で版元さまにチェックしていただく重要なイラスト案件を「顔寄せ案件」と呼んでいるのですが、そのようなニーズが生じた場合は版元キャラクターに似せて制作いただくことが得意なMUGENUPさんにお願いしたいと思いますね。
森谷様:
探検ドリランドを長くご担当していただいているために、弊社からの制作依頼の意図が伝わりやすいということも理由の一つとしてございます。
ご制作いただいたカードに対してのフィードバックも、過去の傾向を鑑みてこちらの意図を汲んでご対応いただけるため、フィードバック内容との齟齬なくご修正いただけることは非常に助かります。
木下様:
また、受け入れキャパシティの広さにも大変助かっています。イラストが急に多数追加で必要になった場合でもMUGENUPさんは受けてくださいます。それだけ『探検ドリランド』に適した絵に対応できるクリエイターの方が多くいらっしゃるということなのだと思います。
そういった積み重ねによって、結果的にいい関係を長く続けさせていただいているのではないでしょうか。
フィーチャーフォンの終了と『探検ドリランド』のこれから
――3G回線を利用したフィーチャーフォンは近年サービス終了が予定されています。それに対してはどのような対策をお考えですか?
内山様:
『探検ドリランド』に限らず、「GREE」全体にとってフィーチャーフォンのサービス終了は大きなターニングポイントになると捉えています。そのためプラットフォームとしてスマートフォンへの移行キャンペーンを行うなどしています。
『探検ドリランド』をフィーチャーフォンでプレイいただいているお客さまにもぜひスマートフォン移行後も継続して楽しんでいただきたいと考えており、『探検ドリランド』独自の移行キャンペーンを開催中(※)です。
※11月15日までの開催予定です。
――環境が変わっても『探検ドリランド』は続いていくということですね。
内山様:
その通りです。フィーチャーフォンの終了は全てのお客さまにとって避けがたいものですが、『探検ドリランド』はその先でもお待ちしています。スマートフォン移行後もぜひ楽しんでいただけたらと思います。
――それでは最後に『探検ドリランド』プレイヤーのみなさまにメッセージをお願いします。
内山様:
これまで『探検ドリランド』を愛し支えてくださっているお客さまに、これからもずっと、より一層楽しんでいただけるプロダクトにしていきたいと考えています。新しいゲーム体験をしていただけるよう日々模索していますので、ぜひ『探検ドリランド』を末永くお楽しみください。
© GREE, Inc.
(文・いしじまえいわ)