イタリア漫画市場のゲームチェンジャー:J-POP革命

イタリア漫画市場のゲームチェンジャー:J-POP革命

ご無沙汰しています!フランスの漫画専門出版社Ki-oon(キューン)のキムです。前回の記事でコロナ禍のフランス漫画市場の急成長について書きましたが、今回はイタリアというもう一つの漫画大国をご紹介します。

実はイタリアは、フランスの次にヨーロッパ最大の漫画市場であり、アニメブームの発祥地でもあります。

 

漫画文化が浸透しているこの国で革命が起きました。そのきっかけは、J-POP社の参上です。

 

2006年に創立されたこの出版社は漫画市場の固定概念をひっくり返すことにより凄まじい成長を遂げ、「約束のネバーランド」や「東京喰種トーキョーグール」、「東京リベンジャーズ」など数多くのヒット作品のライセンスをゲットし、漫画出版業界のTOP3入りを果たしました。

 

ちなみに弊社のオリジナル作品のイタリア語版も出してくださっています。

 

どうやってイタリアの漫画業界を変えたのでしょうか?そんなエネルギー溢れた漫画会社の社長のマルコ・スキャヴォーネ(Marco Schiavone) とマーケティングマネージャーのジョルジア・コッチ・ポンタルティ(Georgia Cocchi Pontalti)に話を聞いてみました!

 

▽目次
J-POP、爆誕
マーケティングと編集のチームワーク
今と昔の日本を愛するイタリアのオタク
革命とは、時代の変化を見逃さない努力

 

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▲左:マルコ・スキャヴォーネ氏、右:ジョルジア・コッチ・ポンタルティ氏

 

 

J-POP、爆誕

J-POPの創立時、漫画市場は主に二社(パニーニ社とスターコミックス社)に支配され、単行本は主にキオスクで販売されていました。キオスクとは街角に立つブースで、低価格の商品(新聞、タバコ、本など)の売店です。

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漫画がイタリアに導入された当初、低価格のため自然にキオスクが主要な販売ルートとなりました。

 

しかし、どこにでもある便利な売店である反面、そこでプロモーションをすることはできず、ハイクオリティーの商品の販売もできません。その一方で、イタリアの一般書店では漫画文化が浸透せず、売り場もそこまで広くありませんでした。

 

そこで、J-POPが革命を起こしました。方針は至ってシンプルで、キオスクに頼らず書店を主要な販売先にすること、ジャケット付きの質の良い単行本にすること、そして何よりもプロモーションに注力することでした。


マルコ社長はその戦略について説明してくださいました。

「我々の初めてのヒット作品は「666〜サタン〜」(Square Enix)でした。2006年に発売した1巻が5万部以上売れ、当時の漫画市場の規模から考えると素晴らしい結果でした。

 

宣伝方法として、期間限定で1巻を1ユーロ(通常価格:4.40ユーロ)で発売しながら、書店に宣伝用のポップやディスプレを配布し、店を盛り上げてもらいました。そういう宣伝はキオスクではできません。

 

ライバルの漫画出版社はキオスクを重要視していましたが、私たちは早めに書店の方に目を向けました。その考え方はイタリアで新鮮だったと思います。

 

J-POPの創立メンバーには出版畑の人間がいなかったおかげで、新しいアイデアを出すことができました。単純にこの業界の習慣を知らずに動いていたというのもあるでしょう。

 

どちらにせよ、その成功例のおかげで読者にも注目してもらうことができ、日本の出版社の信頼も勝ち取りました。」

 

J-POPが感じ取ったのは、キオスクの衰退と書店での宣伝の力です。実際に、2008年の経済危機の影響もあり、その後キオスクは壊滅的な状態に陥りました。10年間で6割が閉店し、コロナの影響で更に多くの売店が消えました。

 

その流通方法に依存していたパニーニ社とスターコミックス社が大きな打撃を受けた一方、すでに書店にシフトしていたJ-POPがマーケットシェアを28%まで拡大しました。

マーケティングと編集のチームワーク

マルコ社長の考え方として、「チームが一丸となって取り組むために、常に皆で話し合うことが大事です」。編集担当者のジョルジアさん自身はマーケティング担当の経験もあります。

 

「私は日本語ができるので、11年前に研修生としてJ-POPに入社した時からマルコは意見を聞いてくれていました。私だけではなく、多くの社員の言葉に耳を傾け、最近読んだ漫画やその作品の面白さ、宣伝方法の提案について話し合います。

 

そうすることでタイトルを選ぶ時には既にプロモーションのイメージができています。

 

近年は書店だけではなくSNS、特にインスタグラムも大事になってきたので、インフルエンサーに新作を面白く紹介するように努めています。

 

例えば、「ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」の宣伝のために、絆創膏や偽銃の入ったサバイバルキットを作り、インスタグラマーやストリーミングサービス・Twitchの芸能人に送りました。

 

そのほか、バレンタインに合わせ、「失恋ショコラティエ」のようなロマンス系の作品と一緒にチョコレートを毎年プレゼントしています。」

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▲メディア対策の一環として、J-POPはインフルエンサーへの作品紹介セットに力を入れています。ただし、SNSで作品を取り上げるかどうかはインフルエンサー次第です。

 

今と昔の日本を愛するイタリアのオタク

イタリアの読者はSNSなど、ネット系の媒体に強く惹かれているものの、漫画を購入するなら紙の単行本を好みます。ジョルジアさん曰く、それは日本とイタリアの大きな違いです。


「日本のデジタル漫画市場が大半になっているのに対し、イタリアはまだ紙中心です。

 

また、日本でも韓国発祥のウェブトゥーンは人気が出てきており、今後の漫画作りの方向を変えていくかもしれません。また、現在の日本で懐かしき戦隊モノが戻ってきている気がします。「怪獣8号」や「戦隊大失格」はその良い例です。

 

イタリアでも、1980年代から多くのアニメが放送されていた影響で、ノスタルジア系のトレンドが衰えませんが、戦隊よりも永井豪の作品や「ベルサイユの薔薇」の方が人気があり、高めのデラックス版も売れています。

 

イタリアでオタクという単語はもはやブランドですが、真のオタクになるためには昔のものも現在のものも両方熟知すべきです!」

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▲J-POPが出した「ベルサイユの薔薇」の豪華なセットボックス。

革命とは、時代の変化を見逃さない努力

漫画業界において革命は起こり続けます。例えば日本では、デジタル革命の影響で出版社・作者・読者の関係が変わりつつも、新たな漫画ブームが起きています。

 

イタリアでもキオスクの衰退で市場が落ち込むどころか、新たな刺激を受けたことで再び漫画ブームが到来し、マルコ社長によるとJ-POPの販売部数は4年で7倍になりました。

 

その成功は状況の判断力だけではなく、漫画に対する愛と好奇心も反映すると言えるでしょう。「J-POPのチームの漫画に対する情熱が読者に伝わると信じています。これからも我々を夢中にしてくれる作品を出していきたいと思います! 」とジョルジアさんは熱く語ってくれた。

 

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Ki-oon公式ウェブサイト(フランス語のみ) : http://www.ki-oon.com/
東京オフィス公式TWITTERアカウント(日本語):@Kim_Ki_oon 

 

東京オフィス連絡先:
代表名:キム・ブデン
住所:c/oフランス商工会議所
    〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2-2-2 日本橋本町YSビル、2階
メール:mochikomi@ki-oon.com
電話番号:03-4500-6668

著

 

Ki-oonの東京オフィス代表キム・ブデンについて:講談社の国際事業局で四年半働いた後一旦帰国、三年半フランスの漫画出版社・PIKAの編集長として勤め、2015年の10月からKi-oonの在日オフィス代表として日本に戻り、現在に至る。

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