koutetu yarouです。今回は「表情の描き方」をテーマに、特に「含みのある表情」について私が考えていることを書き留めていきます。
キャラクターにとって顔や表情はまさに命です。
絵というのは非言語的なコミュニケーションの側面が大きいと、私は考えています。そしてそもそも、表情というものも非言語的なコミュニケーションです。
それは種族の壁すら超えて伝わります。いくつかの表情(怒りや悲しみ・満足など)は犬や猫にもあり、様々な感情を読み取ることも可能です。
人間は他の動物よりずっと表情筋が発達しています。この表情について考えることが、絵のクオリティ、ひいてはメッセージ性を大きく上げることになるのではないかと思っています。
▽目次
イラストにおける表情の重要性
言語を用いたコミュニケーションは、その使用言語や各々の言葉の理解や解釈によって、完全な意思の疎通を図れるとは、必ずしも断言することはできないと私は考えています。
しかし表情は違います。
どのような言語を用いていようと、どのような文化や経歴を持っていようと、表情から感じるものはどんな言語よりもストレートです。
イラストはそれを伝えるすべを持っています。
人を惹きつける表情とは
講座を描く上でこんなことを言うのは憚(はばか)られますが、人を惹きつける表情を描く技術などないのではないかと感じています。(講座を書く場所でこんな放言を行っていいのかわかりませんが)
私が思うには、あなたの心の奥底から湧き出る根源的な感情を、そのまま絵にするのが一番だからです。
今まで経験した悲しみ、辛さ、恐ろしさ、喜び、嬉しさ、幸せ……それを絵に込めるしかないのです。
私の経験してきた今までを、私以外のだれにも理解しえないように、あなたの経験もあなたしか知りえませんし、もちろんあなたしか経験していません。
だからこそ、そこから生まれ得る表情というものは魅力的なのです。
絵はエモーションだけでなく、演出するテクニックも大切
とはいってもこれだけでは講座として成り立ちません。(心の赴くままに表情を描けとしか言ってない為)
しかし、感情そのものを描くのには「己の内に潜む物(クオリアみたいなもの?)」が適していますが、描いた表情をより魅力的に演出するのには「技術と知識」がモノを言うのです!
絵はエモーションだけでなく、それをさりげなく演出するテクニックが大事だと考えます!
表情をうまく演出するテクニックについて
ラフの描くポイント
まずは心赴くままに表情を描きましょう。
この絵を描いたときは、「悲しい気持ち・寂しい気持ち・それでいてすべてを諦めている気持ち・全てを蔑視し、かつそれに哀愁を感じるような気持ち」を感じながら描きました。
複数の感情が込められるとより深みが出ると考えます。
線画を描くポイント
線画に入ります。ラフ時点で込めていた気持ちをよりハッキリと明確に掘り下げていこうとしています。
この時点でラフと明確に意識が違うのは「顔の左右に違う感情を込めよう」と思っている点です。
向かって左は"Disdain"(蔑視) 右は"Sarrow"(悲しみ)に見えるようにしています。
その二つを合わせて"Pity"(哀れみ)を表現しようとしているようです。複数の感情をまぜこぜにすることで、閲覧者の心に訴えかけようとしているのでしょう。
表情を際立たせるライティングとシェーディング
光と影というものは、それだけで本当に様々な物を表現できると思っています。もちろんそれは心情風景でも活用できます。
蔑視を表現した左側にキツめのライトを用いて、突き放すような冷徹さを強調します。対照的に、悲しみを表現した右側にはやわらかなシェード、環境光を入れていきます。
グレースケールで基本が終わったらカラーリングを行います。
影色を選ぶ
下地となる色を乗せたあとに影のカラーも決めていきます。今回は光がオレンジ寄り、影が青寄りで選んでいきます。
完成!
最後に仕上げをして完成です。
まとめ
私にとって表情、顔は描いていて一番楽しい部分です。
それはきっと自分の奥底にある感情を解放できているような気分になるからかもしれません。この講座であなたが表情を描くにあたっての一助になれば幸いです。
著・画 koutetu yarou
フリーランスコンセプトアーティスト・イラストレーターとして活動中。