基礎から学ぶ水エフェクトの描き方

基礎から学ぶ水エフェクトの描き方

これまでに煙、爆発といったエフェクトの描き方を取り上げました。

 

今回は特に難易度の高い「水」をテーマに、エフェクトの描き方をご紹介します。

 

水は常に形が変化し、条件によって全く違う描き方が必要になるやっかいなモチーフですが、ここで紹介するイメージのように捉えられれば、取っ掛かりになると思います。

 

▼目次

状況によって自在に変化する「形」

「方向と流れ」から考える水

「6つのサイクル」で理解する水エフェクトの基本系

より大規模な状況の水エフェクトを描く

 建造物の場合

 小さいスケールの場合

 大きいスケールの場合

実際の作品への応用例

 

 

状況によって自在に変化する「形」

まずは状況に応じて変化する水の「形」について考えていきましょう。

水のかたち

水は、そもそも与えられた力や周りの物により全く違う姿になります。

 

例えば、このコップに入った状態のイラスト。こういう落ちついた状態なら描きやすいですよね。

水のエフェクト

そしてこちらは、水面に力が加わった水の形。

外部から力が加わると、このように先の尖った薄いシートのような形になります。

 

この水のエフェクトは、所々シートが破けているようにすることでリアリティが出せます。

水のエフェクト

こちらは、水が何かからこぼれた形。

 

シチューや水飴、マグマのように粘り気のある液体だと丸っこくて、どろどろした感じの描き方になります。

水のエフェクト

水が勢いよく吹き出すエフェクトです。

 

絞ったホースの先から出る水は速度があるため、針のような見た目になります。まわりに飛び散った水滴も描くと、より良いでしょう。

「方向と流れ」から考える水

次に水の方向と流れから考えていきます。

水の流れを考える

そもそも、水だけでなくエフェクト全体に言えますが、力の方向と流れを「イメージ」できていないとリアリティや説得力が出ません。

水の動きの方向

なので、最初に矢印を使ってエフェクトの方向を決めておくことをオススメします。まずどんな方向に、どのくらいの力が発揮されたかをオレンジ色の軌跡で記します。また、先端を重力で引っ張られて「放物線」を描くことも忘れずに。

水の動き

次に別レイヤーで先ほどの力の方向を意識しながら水の形を描き込んでいきます。


細かい水しぶきを加える際も、矢印の方向に沿って描いていきましょう。

水のエフェクト

矢印レイヤーを消して完成です。このように、あらかじめエフェクトの流れと方向性を意識しておくと、見る人に吹き出す水を錯覚させるような臨場感のある印象を与えます。

 

これをすぐイメージ出来るほど描き慣れていれば、水の形から描いても良いですが、最初はエフェクトの方向を決めるところからスタートしてみましょう。

「6つのサイクル」で理解する水エフェクトの基本系

方向性の次は時間軸で考えてみましょう。

 

水は外部の力が加えられたとき、「静止→起点→クライマックス→衰退→崩壊→消滅」というサイクルを辿ります。これはエフェクト全般にいえるかもしれません。

 

一つひとつ追っていってみましょう。

水のエフェクトメイキング

まず、こちらはスタートとなる静止状態です。 

水のエフェクトメイキング

次に、力が加えられた瞬間です。爆発エフェクトと同じく、最初はとげとげしたフォルムです。

水のエフェクトメイキング

ここで上への盛り上がりが頂点に達します。しかし――

水のエフェクト

今度は重力に引かれてエフェクトが崩壊を始めます。中央に風穴が空き――

水のエフェクトメイキング

下が完全に崩れます。しかし上の方にまだ残っています。発生するときや崩れるときに全部同時だとリアリティが出ません。

水のエフェクトメイキング

そしてまた静かな水面に戻って一つのサイクルが終わります。

より大規模な状況の水エフェクトを描く

水エフェクトで注意が必要なのは、場面や状況のスケールによって描き方がかなり変わってくる点です。実際に例を挙げてみましょう。

建造物の場合

水エフェクトの使用例

巨大建造物などが倒れてくるシーンは、ノーマルだとスケール感が出ません。ミニチュアのように見えてしまいます。

水エフェクトの使用例

このように小さい線を大量に描き込んでとげのようにした感じで描くと迫力が出ます。

小さいスケールの場合

水エフェクトの使用例

毎日の生活などの身近なスケールでは、液体の表面が収縮してできるだけ小さな面積をとろうとする力が働くので、このように丸っこくて粘りのあるフォルムになります。

大きいスケールの場合

水エフェクトの使用例

スケールやエネルギーが大きい場合は、このように短い線のストロークの集合体で描きます。

 

シーンに合わせて自在に描き分けられるようになるのが理想です。液体エフェクトはアニメや漫画で様々な表現の手法が取り入れられてきたので、そちらも参考にしてみてください。

実際の作品への応用例

では最後に、これまでやったことを応用して簡単なイラストを描いてみます。

水エフェクトの描き方

滝に打たれて修行するシーンです。ここでは先ほどの「力の方向と流れ」を使っています。重力で落下する力と、人に当たって上方に跳ね上がる二つの力が働いていることをイメージしながら描きました。

水エフェクトの描き方

大海原での艦隊戦のシーンです。ここでは「大きなスケールでの描き方」を用いました。


小さな線を細かく描き込んでいきますが、重要なのは水の巨大な質量とエネルギーをイメージすることです。イメージしながら描くのと、ただなんとなく線を引くのでは説得力に大きな差が出ます。

水エフェクトの描き方

雨上がりの道路を走る少女のシーンです。日本画でもありますが、絵画の中に「時間の流れ」を生み出すのに水の波紋を使うのは古典的ともいえる手法です。水エフェクトにはこのような情緒的な演出にも使えます。

 

以上となります。水に関して一番重要なのはやはり観察です。ぜひ一度、じっくりと水をよく観察してみてください。

著・画 セーガン

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Twitter  https://twitter.com/karasawa229?lang=ja

 

メーカー勤務。アニメーション、漫画、講座等の自主制作活動に日々励む。ライフワークは映像学。現在絵コンテの描き方を勉強中。