イラストを描いていると
- 画面がゴチャゴチャして見にくい
- キャラクターが背景に埋もれてしまう
といったことありませんか? これらの問題は「明度」をコントロールして解決できます。
例えば、左の作例に「明度」をコントロールするテクニックを活用すると、右の作例のように主役であるキャラクターにしっかり目が行くような画面が作れます。
そこで今回は「明度」を使ったテクニックをご紹介し、キャラクターイラストの魅力を引き立てる方法をお伝えしていきます。
▼目次
明度とは?
明度とは、彩度・色相とともに「色の三属性」のひとつで、明るさの度合いのことです。
カラーイラストをモノクロに変換するとよくわかりますが、ゴチャゴチャ感のない絵はモノクロの時点で整った印象を受けます。カラーイラストを描く場合でも、最初に「明度」から構想を練ることで、意図した印象を作りやすくなります。
イラストを良くする明度の基礎
主役を目立たせるコツ
明度の活用方法は主にふたつあります。そのひとつが「主役を目立たせる」ことです。
明度は白~黒のグラデーション範囲で表現しますが、その中の色を組み合わせることで印象を操作できます。
黒と白の組み合わせはコントラストが強く、くっきりしているように感じます。対して、淡いグレー同士の組み合わせはぼやけて見えるのではないでしょうか。
人間はコントラストが強いものにまず目がいきます。これをイラストにも活用しましょう。
コントラストの強さは、ガウス効果(ぼかし)でも変化します。画像のように、境界線がくっきりしているとより目につきやすく、境界線がぼやけて、グレーが混ざることで注目度が下がります。
イラストの印象をコントロールする方法
もうひとつの明度の活用方法は「印象を操作する」ことです。
コントラストの強さによって下記のように印象が変わります。
- コントラストが強い:くっきり・力強い・硬い.・重い……など
- コントラストが弱い:淡い・優しい・柔らかい・軽い……など
作例のレースも、右側の方がフワフワとした軽い印象を受けるのではないでしょうか。このように、明度の使い分けによって質感も描き分けられます。
印象の操作は、絵全体のイメージにも影響します。画像のように、広範囲のグラデーションを使用すると、コントラストの差が強くなるため、メリハリのある強い印象になります。逆に、狭い範囲を使用すると、淡い印象になります。
どのようなイメージの絵にしたいかによって、あらかじめグラデーションの使用範囲を決めておくことをオススメします。
イラストをクオリティアップできる4つの明度テクニック
明度の活用方法がわかったところで、これらを応用して画面をスッキリさせる方法を4つご紹介します。
1.主役とその他でコントラストの差をつける
この絵は「キャラクターが主役、背景が脇役」だったのですが、左の作例ではキャラクターと背景のコントラスト差がほぼ同じため、キャラクターが背景に埋もれています。
そこで、右の作例はコントラスト差を極端にしてみました。コントラストが強いほど目立ちますので、キャラクターが浮き出して見えるのではないでしょうか。
この効果は「空気遠近法」にも利用できます。単純に主役・脇役を分けるためだけでなく、遠いものほどコントラストを弱くすることでよりリアリティのある絵になります。
また、いわゆる線画の強弱も「明度」をデフォルメして境界線をくっきりさせるための技法ですので、イメージに合わせて濃度を変えてみると良いでしょう。
よくある「肌の線画だけ色を薄くする」という技法は、肌だけを柔らかく見せるために明度を操作しています。
2.ガウス効果を用いる
上記で紹介したように、ぼかして境界線を曖昧にすると注目度が下がります。この効果は、カメラの機能である「ピント合わせ」でも再現できます。臨場感のある絵にしたい場合に試してみてください。
3.ピンポイントで対象を目立たせる
全体のコントラストを調整した後も、「もう少しこのアイテムを目立たせたい」「髪の毛が画面に埋もれてしまった」など、ピンポイントで注目度を操作したい場合が出てくるかと思います。そんなときは、ライティングや舞台配置を駆使して演出を施します。
こちらは手に持ったアイテムを目立たせたいがために、アイテムの背後に強めのライティングを施しています。
こちらは髪の毛を目立たせるため、先程とは逆に背後に暗がりを作ることで浮き上がらせています。
他にも、白い肌を目立たせたいなら黒い服を――黒いアイテムを目立たせるために背景に白い棚を――など、目立たせたいものに合わせて様々な配置やライティングを試してみてください。
4.視線誘導を盛り込む
白い画面に黒い丸がひとつ描かれていると、自然と黒い丸に目がいってしまうのではないでしょうか。
たとえ「目を一番見てほしい!」と思っても、目だけを強調してしまうと、せっかく画面の隅々まで描いたのに、目しか見てもらえないという悲しい事態になりかねません。
そこで、絵の構図を考えるときは、なるべく満遍なく注目点を作りましょう。もちろん、一点だけにキャラクターを置いて、寂しさを演出するといった効果を狙っている場合は当てはまりません。
注目点を配置するときに注意すべきことは、「注目点が多いと目移りしてしまう」ことです。
「みんなが主役!」では、もはや主役がいないのと同じです。
右の画像のように、「あくまで主役は中心の黒い丸」であるということを崩さずに、主役が分からなくなるようなコントラストの配置は避けましょう。
視線誘導の流れを作る
応用として、視線誘導の流れを意識すると良いでしょう。
注目させたい部分を決めて、視線誘導を上手くコントロールすることでイラストの魅力を高められます。
例えば、人間は下記のような部分に目がいきがちです。
- 人間(特に目や顔)
- それが何であるか識別できるもの(得体のしれないものより、コップ!など認識可能なもの)
- 広い空間(コントラストの弱い部分が広がっているところ)
などです。
もちろん、目につきやすいものはその人の嗜好などでも変わってきます。「駅に女の子が立っている絵」があり、作者は女の子を主役に描いたとしても、見た人が電車好きなら脇目も振らず電車に注目するでしょう。見る人のターゲット層を把握しておくのも一つの手です。
例えば、上のイラストの場合は、
- 広い空間である左上から入り
- 最もコントラストが強い瞳(人間の顔という点も大きいです)に行き
- ポニーテールを経由し
- コントラストの強い順に、胸、扇……
- 手を経由して
- 周りが暗い中で光が当たっている左腕
の順で視線が動くよう、想定しています。
これら視線誘導の流れは明度のコントロールでも作れるので、是非試してみてください。
著・画 ゼロモモ
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