イラストを描くうえで、キャラクターに影を入れる塗りは欠かせない工程です。人物は顔や手など複雑な構造をしているパーツが多く、立体感を出そうとすると、光源を考え、物体から落ちる影を考え、逆光まで考慮すると……と思うと頭が混乱してしまう人も多いと思います。
今回はそんな影の塗り方をよりシンプルに、手っ取り早く奥行きを出す2つの方法をご紹介していきます。
1.身体のパーツを単純な立体に置き換える
身体の全てのパーツは、立方体、円柱、球などに置き換えることができます。
シンプルに考えてしまえば顔は球体ですし、手は平べったい立方体に円柱が5本くっついているパーツです。このように凹凸の少ない簡単なものに置き換えればどんなに複雑なパーツの影も混乱せずに塗ることができます。
そして立方体を使用したシンプルな塗りが完了してから、より細かい部分の影を意識して塗れば難しいパーツも簡単に済ませることができます。
2.光源を意識する
当たり前のことですが、影は光が当たっていない場所にできます。ということは、どこかに光の源があるということです。それがどこにあって、どこからキャラクターを照らしているのかという、光源の位置を決めることが、影を塗るうえで非常に重要です。それを決めずにただ何となく影を塗ってしまうと立体感の崩壊につながってしまいます。
光源の位置の決め方
光源の位置ですが、特に意図が無い場合、左右のどちらか1点にしましょう。一番シンプルで簡単です。
そこから光源が動くほど難易度が上がります。特に正面や背面は影ができる場所が少なく奥行きを表現しづらいので難易度は非常に高いです。
同じ理由で、光源が二つ以上ある場合も難易度は高くなります。ある程度慣れてから挑戦することをオススメします。
影を描く際の注意点
影はすべてをぼかさない
滑らかな質感を表現するときに使う影のぼかしですが、全ての影をぼかしてしまうと、イラスト全体がぼやけた印象になってしまい、メリハリの無いものになってしまいます。
影には遮るものが無い場合にできるぼかす影と、何かに遮られてできるぼかさない影があります。
もちろん人物にもぼかさない影ができる部分があります。代表的なのは首にできる顔に遮られた影、服の裾などに遮られた影です。
ちなみにぼかさない影は「落ち影」と呼ばれ、遮光物が光源との間にあるときにできます。ぼかす影とぼかさない影を使い、メリハリのある塗りを心がけましょう。
エアブラシは影に向かない
滑らかな影を塗るツールとしてエアブラシを使っている人が多いと思います。
しかし、エアブラシは背景などに簡単なグラデーション効果を与えたり、エフェクトを入れる際に使ったりする、演出のためのツールです。
色をスプレーのように吹き付けるエアブラシを使ってしまうと、塗りムラや塗り残しが多く目立ってしまいます。滑らかな影は水彩ペンなど、ぼかしの効果のあるペンを使ってしっかり塗りましょう。
まとめ
以上の点をまとめると、
- 難しく考えすぎず、身体のパーツを簡単な立体に置き換えて影を塗ろう
- 必ず光源の位置を決めよう
- ぼかさない影「落ち影」を作ってメリハリのある影を塗ろう
- 影を塗る際にはエアブラシの使用は控えよう
この4つに気をつけて影をつけてみてください。より立体的な影がつけられるようになると思います!
なお、さらに詳しい情報は私の著書『デジタルイラストの「身体」描き方事典身体パーツの一つひとつをきちんとデッサンするための秘訣39』の方を参考にしていただければと思います。
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フリーランスのイラストレーター。
様々な絵柄を駆使し、カードゲーム「マジンボーン・データカードダス」「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」のイラストや、4コマ漫画「BIOHAZARD THE TOON」の執筆、小説の挿絵などを手がける。また、絵の描き方本『デジタルイラストの「身体」描き方事典身体パーツの一つひとつをきちんとデッサンするための秘訣39』を執筆し、活動の幅を広げている。